研究課題
① EGFR遺伝子変異陽性肺癌細胞のEGFR-TKI耐性獲得に対するPAI-1の関与の検討1.PC9 とHCC827 (EGFR Exon19欠失変異陽性)、H1975(EGFR L858R変異とT790M変異陽性細胞)を6wellプレートに撒き、EGFR-TKIであるgefitinib又はosimertinib がIC50の30-50倍の濃度で含まれる条件で培養を行い、9日後に残存している細胞をEGFR-TKI耐性細胞とした。2.全ての細胞で既知の耐性変異であるC797Sは認められず、 PC9とHCC827ではT790Mも認められなかった。3.EGFR-TKI耐性化細胞におけるPAI-1 mRNAをquantitative RT-PCR又はELISAで評価したところ、耐性細胞ではコントロールと比べてPAI-1 mRNA発現、タンパク濃度ともコントロールに比べて高かった。4.EGFR-TKI耐性細胞の培養液中にPAI-1阻害薬を添加し、72時間後に細胞数を測定したところ、各耐性細胞ともコントールに比べて増殖能が抑制されることが示された。② PAI-1が関与するEGFR-TKIへの耐性獲得機序の検討1.Osimertinib耐性のPC9とH1975を用いてマイクロアレイを行ったところ、Osimertinib耐性細胞では、E-cadherinの発現低下、Fibronectin、α-SMA発現の亢進が認められ、Osimertinib耐性細胞ではEMTが生じていることが示唆された。この結果はRT-PCRでも再現され、耐性細胞の培養液中にPAI-1阻害薬を添加したところ、Fibronectin、α-SMA発現は抑制された。2.②-1で認められたEMTを生じる経路を同定するために、マイクロアレイデータを検討したところ、インテグリンを起点としたEMT経路の遺伝子発現の亢進が認められた。
2: おおむね順調に進展している
当初予定した実験の3分の2が終了しているため
① ここまでの研究から、PAI-1が関与するEGFR-TKIへの耐性獲得機序はインテグリンを起点としたEMT経路であることが示唆された。今後は、PAI-1とこの経路の関与の存在を確認するために、耐性細胞の培養液中にPAI-1阻害薬を添加して、この経路に存在するRAS、RAL、CDC42、Src、Rho遺伝子発現が抑制されるかどうかを検討する。② 免疫不全マウスにEGFR遺伝子変異陽性ヒト肺癌細胞を皮下接種した肺癌モデルマウスを作成する。このモデルを用いて、EGFR-TKIを投与した後に残存した腫瘍組織でもin vitroの結果と同様の変化が生じること、さらにはPAI-1阻害薬を用いることで耐性細胞の出現を抑制できるかどうかを検討する。
今年度は、残余の試薬の使用が可能であったため、助成金の残余が生じた。今年度は動物実験を進捗させる予定のため、ここに残余の助成金を利用する予定である。
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