研究課題
8名のEGFR遺伝子変異陽性肺腺癌患者のEGFR-TKI治療前と耐性化後の組織におけるPAI-1発現の比較をしたところ、耐性化後の検体では治療前よりもPAI-1発現が亢進していることが示された。続いて、PAI-1がEGFR遺伝子変異陽性肺癌のEGFR-TKIに対する耐性に関与しているかどうかを検討するため、3種類のヒトEGFR遺伝子変異陽性肺癌細胞株を用いたin vitroの実験を行った。この実験では、EGFR-TKI (ゲフィチニブ又はオシメルチニブ)に耐性化した細胞はPAI-1を高発現しており、このPAI-1を阻害すると、耐性化細胞は生存できないことが示された。よって、PAI-1が肺癌細胞のEGFR-TKIに対する耐性に関与していることが確認された。続いて、耐性化した細胞はReal-time PCRによりEMT関連遺伝子を高発現しており、ここでPAI-1を阻害するとこれらのEMT関連遺伝子の発現が抑制された。よって、PAI-1は癌細胞の耐性化にEMTを介して関与していることが示された。さらに、マイクロアレイによる検討により、PAI-1は細胞外マトリックスとインテグリンを起点としたEMT経路を介して耐性化に関与していることが示された。続いて、免疫不全マウスに上記で用いた細胞株を接種して皮下腫瘍モデルを作成した。このマウスにオシメルチニブを投与して、耐性化した腫瘍とオシメルチニブを投与していない腫瘍においてPAI-1発現を比較したところ、耐性化した腫瘍ではPAI-1が高発現していることが示された、さらに、同様の皮下腫瘍モデルにおいて、オシメルチニブ単独投与を行うと、腫瘍は一時縮小するものの再増大するが、PAI-1阻害を併用投与するとこの再増大が抑制されることが示された。以上より、PAI-1阻害剤がEGFR-TKI耐性克服のための有望な治療薬となることも示された。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件)
Cancer science.
巻: 112 ページ: 369-79
10.1111/cas.14711
Anticancer research
巻: 41 ページ: 1497-506
10.21873/anticanres.14908
JAMA network open.
巻: 3 ページ: e2022906.
10.1001/jamanetworkopen.2020.22906
International journal of clinical oncology
巻: 25 ページ: 74-81.
10.1007/s10147-019-01539-2