本研究は難治性疾患である特発性肺線維症の病態におけるmicroRNA-22とその標的遺伝子であるTET2遺伝子の関わりについて明らかにすることを主目的に研究を開始した。2018年度にmicroRNA-22 dificientマウスを用いて肺線維症モデルを作成し、肺線維化の程度についてWTマウスと比較したが、肺線維化の差が軽微であった。2019年度はmicroRNA-22の発現が亢進する老齢マウスでの実験を行ったが、microRNA-22 dificientマウスとWTマウス間で肺線維化の有意な差を認めなかった。この要因として、microRNAは複数の遺伝子を標的としており、microRNA-22がTET遺伝子の他に肺の線維化に関わる遺伝子の発現に関与している可能性が考えられた。そのため、TET遺伝子のみに研究対象を絞り、2019年度は研究を進めた。ブレオマイシン誘導肺線維症モデルマウス肺において、TET1遺伝子の発現が減弱していた。また、small interfering RNAを用いてTET1遺伝子の発現を減弱させた培養ヒト肺線維芽細胞株では、controlと比較し筋線維芽細胞への分化の指標となるαSMAの発現が亢進していた。加えて、ブレオマイシン誘導肺線維症モデルマウスに対して、DNAメチル化阻害薬を経気道投与することにより肺線維化の抑制が認められた。以上の結果より、肺線維症の病態にTET遺伝子及びDNAメチル化が関与していることが示唆された。現在、肺線維症症例から外科的肺生検で採取した肺組織をDNAメチル化アレイを用いてDNAメチル化を網羅的に解析を行い、治療標的候補遺伝子の選定を行っている。
|