研究課題/領域番号 |
18K15965
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研究機関 | 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
盛田 麻美 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 特任研究員 (20647193)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Pkm1 / Pkm2 / Pkm / 代謝 / 小細胞肺がん |
研究実績の概要 |
小細胞肺がん(SCLC)を典型とする肺神経内分泌腫瘍(肺NET)は特異的解糖系酵素Pkm1を発現しており、その生存・増殖を同酵素に依存している(Pkm1アディクション)。PKM1がNAD合成経路を活性化するという知見と合わせ、“Pkm1-> NAD合成”の代謝軸を肺NETの新規治療標的として開発することを目的として研究を行った。具体的には、NAD合成阻害に対する感受性や、NAD合成阻害がSCLCに細胞死をもたらすメカニズムを検討した。 これまでの検討で、NAD合成酵素阻害剤が、マウス移植モデルにおいて抗腫瘍効果を示すことが示唆されていた。この知見を確立するため、より十分なN数を確保して検討を行った。SCLC株由来腫瘍担癌マウスにて、期待通り、新規NAD合成阻害剤の強い抗腫瘍効果を確認することができた。培養系では、上記NAD合成阻害剤は、SCLC細胞の細胞死を強く誘導する。このメカニズムについて検討を行った。LDHAリリースやcaspase活性化を指標に調べたところ、NAD合成阻害による細胞死には、ネクローシスとアポトーシス両方の要素が含まれていることが示唆された。経時的には、阻害剤処理により、速やかにNADレベルが減少し、ついでPARP活性の低下やヒストンアセチル化修飾の著減が観察された。ところで、通常の細胞培養培地に含まれるNAD基質はニコチンアミドのみであるが、生体内ではニコチン酸やトリプトファンも利用される。SCLCがそれらをNAD合成に活用する活性を調べたところ、株毎に大きな違いがあることが分かった。この活性次第では、ある種の食事制限が腫瘍抑制効果を示すことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
NAD阻害ターゲット治療の動物モデルPOC取得が想定以上に順調に推移したこと、新しい食事療法開発の端緒となる知見を得られたことなどから、上記評価とする。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度に引き続き、マウス移植モデルでの解析を中心に、NAD阻害剤によるSCLC治療効果や、食事制限がSCLC腫瘍増殖に及ぼす影響を明らかにする。メカニズムについても、より詳細に検討する。手術検体の解析では、関連遺伝子発現量/パターンと臨床情報との比較・相関解析を行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
・消耗品費が当初想定よりも僅かに少なくすんだため ・次年度の消耗品費に上積みし、より迅速な計画進捗をねらう。
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