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2019 年度 実施状況報告書

肺MAC症における未解明クラリスロマイシン耐性化因子の同定と新規薬剤の有効性評価

研究課題

研究課題/領域番号 18K15966
研究機関国立感染症研究所

研究代表者

深野 華子  国立感染症研究所, ハンセン病研究センター 感染制御部, 主任研究官 (40807541)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード肺MAC症 / マクロライド耐性
研究実績の概要

近年、日本国内の結核患者数の減少に相反し、非結核性抗酸菌(NTM)症の患者数は著しい増加傾向にあり、2014年の肺NTM症新規登録患者数は結核患者とほぼ同数の年19,000人であることが報告されている。また、国内の肺NTM症罹患率については人口10万人あたり14.7人(2014)と結核の罹患率12.3人(2018)を既に大きく上回っており今後も患者数の増加が見込まれる。
これらNTM症の原因菌として9割以上を占めるのがMycobacterium avium complex (MAC)である。肺MAC症治療にはマクロライドであるクラリスロマイシン(CAM)をキードラッグとした多剤併用療法が実施されるが、治療期間が一年から長い場合は一生涯に渡るため、治療途中にクラリスロマイシン耐性菌が出現することにより根治は極めて困難となる。
NTMにおけるマクロライド耐性化因子の研究では、23S rRNA遺伝子上の点突然変異あるいはErythromycin ribosome methyltransferase (erm)遺伝子によるメチル化機構が広く知られている。
日本国内の患者数が最も多い肺MAC症原因菌M. aviumはerm 遺伝子を持たないことが既に明らかになっていることから、これまでは23S rRNA 遺伝子上の点突然変異のみがマクロライド耐性機構として理解されてきた。しかしながら、国内・国外におけるM. avium臨床分離株の中には23S rRNA遺伝子上に突然変異がないにも関わらずマクロライドの1種であるクラリスロマイシンに対して耐性を示す株が存在することを見出しており、本研究ではこれら未解明のマクロライド耐性機構を持つM. aviumの耐性化機構の理解に迫ることを主たる目的としている。
また、クラリスロマイシン耐性肺MAC症に有効な新たなキードラッグの創成にも取り組んでいる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

クラリスロマイシン耐性株のうち23S rRNA遺伝子の2058、2059部位に変異を持たない株を2株を単離することに成功した。これら2株に関しては、23SrRNA遺伝子全域における他の共通変異は見出されなかった。また、次世代シークエンサーにより解析を行なったところ、双方はM. avium subsp. hominissuis のsub lineageうちEast asia 2のクラスターに属することを確認した。
M. avium subsp. hominissuisは、環境中に常在するため亜種内での多様性が非常に高い頻度で遺伝子変異が起こることが明らかとなってきた。これまでの研究成果の中で、この高頻度の遺伝子変異により、単一株を用いた責任遺伝子の同定は非常に困難であることが明らかとなった。
そこで、複数の医療機関の協力により、未解明クラリスロマイシン耐性化因子を持つ菌株が分離された患者の耐性化前に採取された臨床分離株を集積・分離し、ショートリードシーケンスデータにより、クローナルな株であることを確認できた。
また、クラリスロマイシン感受性MAC72株を使用した人為誘導試験では、全ての株で23S rRNA遺伝子上にミューテーションが入った。このことにより、未解明クラリスロマイシン耐性因子には、クラリスロマイシンだけでなく他の要因が複合的に条件づけられることが必要であることが示唆された。

今後の研究の推進方策

耐性化前に採取されたクラリスロマイシン感受性臨床分離株を、PacBioによるロングリードシーケンスデータを取得し、完全ゲノム長の決定を行う。
その後、感受性臨床分離株をリファレンスゲノムとしてSNP解析を実施することにより、未解明クラリスロマイシン耐性責任因子の特定を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

シーケンス外注費が、当初の見込みより安価で済んだため。

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公開日: 2021-01-27  

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