研究実績の概要 |
日本国内の結核患者数の減少に相反し、非結核性抗酸菌(NTM)症の患者数は著しい増加傾向にあり、患者数が14万人を超える新興感染症である。申請者らの研究グループは2014年の肺NTM症新患数が結核患者とほぼ同数の19,000人であることを報告しており、今後も患者の増加が見込まれる。肺NTM症の約9割を占める肺MAC症の治療にはクラリスロマイシン(CAM)をキードラッグとした多剤併用療法が実施されるが、治療途中のCAM耐性菌出現により根治は極めて困難となる。 他属菌におけるマクロライド耐性化因子の研究では、23S rRNA遺伝子上のドメインⅤにおける点突然変異のほかに膜透過性の変化や多剤排出トランスポーターの活性化等が理解されているが、NTMにおいては23S rRNA遺伝子上の点突然変異のみが知られている。本研究では、既知の23S rRNA遺伝子上の点突然変異に当てはまらないCAM耐性株の存在を見出し、それらの株がいずれもEast Asia 2のLineageに属することを確認した。また、23S rRNA遺伝子全域における他の共通変異は見いだされなかった。 また、CAM耐性化肺MAC症の予後が非常に悪いことからCAMに代わる新規抗菌化合物の開発が待たれている。本研究ではNocardia pseudobrasiliensisの骨格ペプチド内のアミノ酸置換により誘導体作成を行い、培養菌体抽出物を回収し、M. smegmatis, M. abscessus, M. avium に対する抗菌活性評価を実施した。その結果、野生型の抽出物と比較し、組換え株Aが8倍の抗菌活性を示す新規誘導体を見出すことができた。
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