肺動脈性肺高血圧症は、明らかな原因なく肺動脈圧・肺血管抵抗の高度の上昇が起こり、右心不全から死に至る厚労省の指定難病である。膠原病では高率に肺動 脈性肺高血圧症の合併がみられるが、特発性肺動脈性肺高血圧症の特効薬である血管拡張薬に抵抗性を示し予後不良のため、病態の解明と新規治療の探索が急務 である。予後不良の要因として、膠原病では組織学的に肺動脈のみならず肺静脈にも閉塞性病変がおよび易く、肺静脈閉塞症に類似する点があげられるているが その病態はよく調べられていない。さらに肺高血圧症の予後においては、上昇した肺動脈圧・肺血管抵抗に対して右室が適応しているかが重要な因子となるが、 これまで十分調べられていない。 本研究では肺高血圧症剖検例を用いて膠原病に伴う炎症のタイプ・組織リモデリングがどのように肺血管病変と心病変に関わっているか、組織学的及び免疫組織学的に多面的に評価することにより、治療戦略へつなげることが目的である。2021年度は、昨年度の膠原病性肺高血圧症の症例と特発性肺動脈性肺高血圧症症例との比較に加え、肺静脈閉塞症例とも組織学的・免疫組織学的所見の比較を行った。また、Tリンパ球(ヘルパーT細胞と細胞傷害性T細胞など)とマクロファージのサブタイプについて各種免疫染色を行い免疫プロファイルを確認するとともに関連するサイトカインの一部についても免疫染色を用いて発現の有無や局在を調べた。
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