研究課題/領域番号 |
18K15969
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鮎澤 信宏 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任研究員 (50459517)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高血圧 / 腎臓 / ミネラロコルチコイド受容体 / アンジオテンシンII / アルドステロン / Pendrin / NCC / 食塩感受性 |
研究実績の概要 |
AII持続投与や低食塩食時の内因性のAII上昇による腎Pendrin蛋白の発現増加が間在細胞MR欠損マウスでは抑制されることが確認できた。また、低食塩食時に間在細胞MR欠損マウスは体重減少や血圧低下をきたすことも確認された。なお、この際に代償的なNCC活性化が起こることが分かり、それに応じて間在細胞MR欠損マウスの表現型は徐々に回復したが、NCC阻害薬を追加投与すると、野生型に比べ著明な体重減少・血圧低下を示すことが分かった。以上から、体液量減少時にはAII上昇によるPendrin発現増加がNCC活性化と協調的にNaCl再吸収に働き、体液量維持に関わることが示された。今後は間在細胞MRによるPendrin制御機構の詳細につき検討を行っていく。 一方、Aldo投与時には著明なPendrin発現増加と管腔膜側集積が見られたが、これらは間在細胞MR欠損マウスではほとんど抑制されず、別経路の存在が想定された。全ネフロンMR欠損マウスやENaC阻害薬、K補充を用いた実験の結果、Aldo投与によるPendrin制御は主細胞MR-ENaC活性化による低K血症に関連して起こることが示唆された。Aldo投与した間在細胞MR欠損マウスや全ネフロンMR欠損マウスにそれぞれK補充とK制限を行うと、Pendrin発現の抑制および増加が起き、上述の仮説が支持された。なお、本系では低K血症に連動して代謝性アルカローシスが見られ、両者は常にPendrin制御に関連していた。現在、これら2要素の役割につき別個に解析する実験に着手している。 また、Aldo投与時にはPendrinと共にNCC活性化も起こり、両者が食塩感受性高血圧の形成に寄与すると想定される。本年度にNCC欠損マウスが得られており、本マウスを用いてNCCの影響を除外した状態でPendrin制御と高血圧の関係について検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は間在細胞MR欠損マウスやNCC欠損マウス等の遺伝子改変マウスが順調に繁殖でき、これらを持ちいた実験が概ね予定通りに遂行できた。また概ね想定していた結果が得られたため、計画通り次に予定していた実験に着手することが出来ている。 一方で、間在細胞蛍光標識マウスを用いたFACSによる間在細胞分取解析については、標的とするPendrin陽性間在細胞の収率が想定よりも低いことが明らかとなっている。これはPendrin陽性間在細胞自体の数が全体の中で少ないという最近の報告や、細胞分離中のPendrin陽性間在細胞の生存率が低いことが原因と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
昨今、NCCやPendrinはNaCl再吸収調節とともにK保持にも関わることが示唆されている。 間在細胞MR欠損マウスに低食塩食・NCC阻害薬を投与するモデルにおいては、Pednrinの抑制による尿Na流の変化などによりK保持の破綻が想定され、これについても検討を加える予定である。またFACSによる間在細胞分取の精度が上がり次第、AII投与時の間在細胞MRを介したPendrin制御機構につき検索を行う。 Aldo投与モデルについては、低K血症とアルカローシスにつき別個に介入を行い、両者のPendrin制御への寄与を個別に解析する。さらにNCC欠損マウスにおいてアルドステロン投与による食塩感受性高血圧が起こるか、テレメトリによる血圧測定を用いて検討し、さらにK補充等による介入によるPendrin抑制で高血圧が改善するか解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の調達の工夫等により、当初予定より当該費用が節約されたため。またマウスの繁殖に際して、一部人工授精を使用するなどして想定飼育匹数より減じたため飼育・ジェノタイピング費用などが節約されたため。 次年度はNCC欠損マウスの繁殖やテレメトリによる血圧測定に際して、消耗品等の費用が増加する可能性があり、これらに次年度使用額を充てる予定である。
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