昨年度までに、間在細胞MR欠損マウスでは低食塩食・NCC阻害薬投与時に野生型に比べ腎Pendrin発現が抑制され、体重減少・血圧低下が見られることが分かっていた。さらに、その際には低K血症も見られた。同条件下において、間在細胞MR欠損マウスでは野生型に比べて腎髄質のENaC活性増強が見られたため、本系ではNCCとPendrinの低下によるdistal flowの増加と髄質ENaC活性化により尿中K喪失が起きるものと思われた。以上から体液量減少・NCC阻害時には間在細胞MRを介したPendrin活性化が体液量・血圧維持および正常K保持に働くことが示された。 一方、アルドステロン投与時には主細胞MR-ENaC経路の活性化により起こる低K血症性アルカローシスにより直接的にPendrin活性化が起こることが分かっていた。さらに、アルドステロン投与によるPendrin活性化はアセタゾラミドによるアルカローシスのみの補正により抑制できることが分かった。すなわちアルドステロン過剰時には、NCCは低K血症で活性化すると知られるのに対し、Pendrinはアルカローシスで活性化するということが分かった。また、NCC欠損マウスにアルドステロン投与を行うと低K血症性アルカローシスを呈し、Pendrin活性化とともに食塩感受性高血圧が見られたが、アルカローシスの補正によりPendrin抑制と降圧が得られた。すなわち、アルドステロン過剰・NCC阻害時にはアルカローシスによるPendrin活性化が高血圧の維持に働くことが示された。 以上の結果はNCC阻害薬であるサイアザイド利尿薬に抵抗性の高血圧の形成にMRを介したPendrinの活性化が関与することを示唆するものであり、結果をまとめて英文誌に投稿・受理された。(J Am Soc Nephrol. 2020;31:748-764)
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