研究課題/領域番号 |
18K15970
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
磯部 清志 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座助教 (80804591)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脂肪分化 / WNK4 / 3T3-L1 / メタボリックシンドローム / PPARγ / C/EBPα |
研究実績の概要 |
1.3T3-L1細胞とmpkDCT細胞を使用したWNK KO細胞の作成 我々が作成したWNK4ノックアウト(KO)マウスの解析では、脂肪細胞分化抑制、耐糖能の維持という表現系が観察された。WNK4を制御することが肥満や高血圧の治療につながっていくことが期待される。WNK4がどのように肥満と関連しているかを解明するため、WNK4ノックアウト細胞をCRISPR-Cas9を用いて作成した。GFP発現CRISPR-Cas9ベクターをそれぞれの細胞にトランスフェクションし、GFPを発現している細胞をFACSによりsingle cell sortingを行った。培養後、Western blottingにてWNK4の蛋白発現量を調べた。その結果、3T3-L1細胞で5クローン、mpkDCT細胞で6クローンの培養細胞ラインを得ることができた。 2.WNK4 KO細胞の形質の評価 得られたWNK4ノックアウト細胞の形質の評価を行う前に、single cell sortingによるartifact effectを確認した。mpkDCT細胞ではWNK4の発現量やその下流であるSPAKのリン酸化に影響は認められなかった。一方、3T3-L1は脂肪分化やPPARγの発現量にSingle化したクローン毎にばらつきが認められたため、WNK4 KOによる影響かどうかは複数のクローンを使用するなどして慎重に評価する必要があると考えられた。 WNK4が活性化する低浸透圧刺激で下流のSPAKのリン酸化も増加する。WNK4 KOマウスではSPAKのリン酸化は著明に減少していた。mpkDCTでのWNK4 KO細胞では、下流のSPAKのリン酸化は低浸透圧刺激に反応してリン酸化の増加が認められた。培養細胞はマウスとは異なる形質を示していた。3T3に関してはPPARγおよびC/EBPαの発現がWNK4KOで減少していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
WNK4の脂肪分化への関与また、WNK4の下流シグナルはSPAK/OSR1以外にはほとんど知られていないことから、WNK4自体の機能も不明な点が多い。WNK4は腎遠位尿細管で塩分出納に関与するNa-Cl 共輸送体(NCC)の主要な調節因子であり、腎と脂肪でのWNK4シグナルを同時に解析することは、肥満や高血圧といった治療法につながるものと思われる。脂肪分化能を有する3T3-L1細胞とマウス腎遠位尿細管細胞であるmpkDCT細胞を使用し、CRISPR-Cas9ゲノム編集法を利用しWNK4 KO細胞を複数クローン作製することに成功した。WNK4キナーゼの下流にSPAKがあることが知られており、WNK4が活性化する低浸透圧刺激で下流のSPAKのリン酸化も増加する。WNK4 KOマウスではSPAKのリン酸化は著明に減少していた。しかしmpkDCTでのWNK4 KO細胞では、下流のSPAKのリン酸化は低浸透圧刺激に反応してリン酸化の増加が認められた。マウスの結果からは変化していないことが期待されたが、培養細胞はマウスとは異なる形質を示していることが分かった。3T3に関しては脂肪分化のマスターレギュレータ―であるPPARγおよびC/EBPαの発現がWNK4KOで減少していた。現在複数のラインを用いて脂肪分化率を検討している。またWNK4のインタラクトームの実験系も確立することができ、現在解析を進めている。またSILAC labelingの準備も現在進めており、Labelingが終了したらWNK4 KO細胞を利用しリン酸化プロテオミクスを行い、Wild typeとWNK4 KOのリン酸化の比較を網羅的に解析する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
WNK4の下流シグナルはSPAK/OSR1以外にはほとんど知られていないことから、WNK4自体の機能も不明な点が多い。クロスリンカーを用いてWNK4と関連する蛋白を解析するインタラクトームの実験系も確立することができ、現在解析を進めている。WNK4のkinase dependentなシグナル伝達系もWNK4の機能を知る上では非常に重要であると考えられる。WNK4 KO細胞とWild typeを使用しSILAC labelingの準備も現在進めており、Labelingが終了したらWNK4 KO細胞を利用しリン酸化プロテオミクスを行い、Wild typeとWNK4 KOのリン酸化の比較を網羅的に解析する予定である。解析によりWNK4と関連のあるリン酸化シグナルカスケードを同定することが可能となる。それぞれリン酸化シグナルカスケードは生理的な役割を持っていることが知られており、WNK4の細胞内での機能を明らかにすることが出来ると考える。同定した生理的役割からメタボリックシンドロームの治療対象となる可能性をもつシグナル伝達系を阻害し、その効果を検証する。
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