研究実績の概要 |
本研究の目的は,短鎖脂肪酸であるプロピオン酸が,その受容体であるGPR41/43を介して,腎保護効果を有するか否かを検討することを目的とする.その研究の結果により,腸内環境の偏移が腎機能の変化に影響を及ぼす可能性を示す基礎データとなり,慢性腎不全の治療に腸内環境をターゲットにするという新しい治療法の開拓が出来る可能性があるからである. 平成30年度の実験の続きで,アデニン摂取による慢性腎不全モデルマウスに短鎖脂肪酸であるプロピオン酸自由引水摂取で,腎機能が濃度依存性に有意に改善し得ることを見出した.その原因として,炎症に影響を及ぼしたのか,線維化に影響を及ぼしたかを検討するために,TNFα,IL-1β,IL-6などの炎症性サイトカイン,さらにTGF,Col1a, Col3aなどの線維化に関与するサイトカインのmRNAの発現を検討した.その結果,炎症性サイトカインはプロピオン酸の濃度依存性に改善することが判明した.また,線維化に関与するサイトカインは軽度の改善効果しか見られず,プロピオン酸の抗炎症性作用による腎保護効果であることが判明した.また,正常マウスと,GPR41ノックアウトマウス,GPR43ノックアウトマウスの3群に同時にアデニン負荷を行い,慢性腎不全を誘導すると,正常マウスに比べて,GPR41/43ノックアウトマウスで早い時期に血清学的腎機能,腎病理組織が悪化することを見出した.よって,GPR41/43の腎保護効果を見出すことが出来たと考えている.
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