わが国の透析患者(ESRD)におけるフレイルは未解決の部分が多い。ESRD患者におけるフレイルの予後評価及び新規バイオマーカーの探索、腎不全モデルマウスや骨格筋細胞を用いて、尿毒素が骨格筋細胞に与える分子機構を検討することによって、腎不全がフレイルの成因に与える機序を解明することを目的に研究を進行している。まず、透析患者のフレイルにおける予後解析に重点を置き、J-CHS indexを用いて、前向きコホート研究を施行した。フレイルは生命予後および入院に関して、独立した有意なハザード比の上昇を認め、J-CHS indexによってESRD患者の予後を予測できることが証明され、一部内容を研究論文に報告した(J Clin Trials. 2020)。続いて、心血管疾患(CVD)を合併についてフレイルに対する予後の評価を行ったところ、CVDの中では下肢閉塞性動脈硬化症(PAD)合併が最も予後不良で、死亡はフレイルあるいはPAD単独の約2倍であり、入院を伴うイベントは約90%に達していた。ここまでの内容は2020年度日本透析医学会学術集会・総会で報告し、論文執筆中である。マウスの検討では、C57black6マウス15週齢と56週齢の2群比較により、大腿四頭筋を採取し、Hematoxylin Eosin染色を用いて、加齢による骨格筋への影響を評価した。56週齢では筋線維間に空間が確認され、筋線維断面積は、15週齢と比較して約52%減少しており、加齢により筋線維断面積が減少していることが確認された。現在、C57BL6マウスを5/6腎摘群とシャムオペ群に分け、同様に骨格筋評価し腎不全が骨格筋に与える影響を評価しつつ、炎症性サイトカインやマイオカインなどの評価を予定している。さらに、培養骨格筋細胞を、尿毒素物質と共添加し、尿毒素が骨格筋へ与える影響について検討していくことも予定している。
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