研究課題
本研究では蛋白尿を呈する糸球体疾患における糸球体上皮細胞に発現するSemaphorin3A(SEMA3A)の病態への関与及びSEMA3A阻害剤の糸球体障害保護効果を解明することを目的とした。まずAdriamycin(ADR)投与による糸球体上皮細胞障害を野生型マウスに惹起させた。ADR投与により高度の蛋白尿、糸球体硬化及び腎機能障害を呈することを確認した。ADR障害を惹起したマウスは、コントロール群と比較してSEMA3A及の発現が免疫染色法及びイムノブロット法の評価にて増加し、尿中SEMA3A排泄の増加も認められたことにより、糸球体障害におけるSEMA3A発現増加が糸球体障害の病態に関与している可能性が示唆された。次にSEMA3A阻害剤の糸球体疾患への効果をみるために、コントロール群、ADR群、ADR+SEMA3A-I群(SEMA3A阻害剤連日投与)に分けて2週間後に屠殺して評価を行ったところ、治療群では尿中アルブミン排泄は有意に低下し、尿中SEMA3A排泄も低下した。TUNEL染色及びqPCRの評価にてADRにより糸球体上皮細胞のアポトーシスは増加を認めたが、治療群で有意に抑制されたことから、SEMA3A阻害剤による糸球体上皮細胞のアポトーシスの抑制を介して、保護効果が認められることが示された。in vitroで上記の機序を確証するために、マウス不死化糸球体上皮細胞を用いてADRを用いてアポトーシスを誘導し、SEMA3A及びSEMA3A阻害剤の効果を評価したところ、ADR及びSEMA3A投与群では上皮細胞アポトーシスが誘導された一方でSEMA3A阻害剤によりADRによる上皮細胞アポトーシスは有意に抑制された。さらにシグナル解析を行い、SEMA3A阻害剤によるアポトーシス抑制効果はSEMA3Aシグナルの下流にあるJNKシグナルを介することが示唆された。
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