本研究計画では、一次線毛の基部(外部)に局在するタンパク質kendrinが一次線毛の内部を介するシグナル伝達制御に関与している可能性を明らかにすることを目的としている。 前年度は、kendrinが一次線毛内のタンパク質の局在や動態の変化に関与する分子と相互作用している可能性が考えられたため、ビオチンリガーゼを用いた近接依存性標識法を用いてkendrinの結合タンパク質の解析準備をおこなっていた。研究計画当初とは異なり、BirA(R118G)に変えて、更に高効率にビオチン化する事が可能なTurboIDを使用して検討をおこなう計画にした。これまでに、TurboID-kendrinが基底小体に局在していること、及び、基底小体近傍にビオチン化されたタンパク質が局在している事を蛍光顕微鏡観察にて見出した。 今年度は、共同研究を行っている理研・生命機能科学研究センター・分子配列比較解析チームにTurboID-kendrinによりビオチン化されたタンパク質の解析を依頼した。現在は、このデータの解析をおこなっており、特に一次線毛を介するシグナル伝達に関与すると報告されている分子があれば、免疫蛍光染色やwestern blottingによりkendrinとの相互作用について更に検討をおこなっている。PCNTと相互作用する分子が明らかになれば、これらが関与する一次線毛を介する新たなシグナル伝達の分子メカニズムの解明につながることが期待できる。 また、一次線毛を有する細胞におけるkendrinの詳細な細胞内局在や、kendrinを発現抑制した際の一次線毛の構造異常に関して透過型電子顕微鏡を用いた解析をおこなう予定であったが、透過型電子顕微鏡の付属機器が故障したためCCDカメラによる画像撮影が困難である。そこで、超解像顕微鏡を用いた構造観察を行い、PCNTの発現抑制による構造異常の有無を検討している。
|