研究課題
糖尿病性腎症は維持透析患者の透析導入の原因疾患として最も多い.また,糖尿病成人症を合併した2型糖尿病患者では,透析導入に至るまでに,心血管イベントを発症して死亡する患者の方が多い.しかし,臨床的に診断した糖尿病性腎症患者の場合,糖尿病による腎障害ではない慢性糸球体腎炎を合併している患者を含んでしまう.そこで,腎生検で糖尿病性腎症と診断された患者の病理組織像を解析することで心血管イベントを引き起こしやすい患者を同定することができないかと考えた.奈良県立医科大学で腎生検を施行し糖尿病性腎症と診断した408例患者の病理組織像を解析し,その腎予後,心血管イベント,生命予後を検討した.さらに,病素組織像のうち,小血管の内膜肥厚と細小血管のヒアリノーシスで心血管イベントを検討したところ,小血管の内膜肥厚の程度は心血管イベントと関連しなかったが,細小血管のヒアリノーシスの有無と心血管イベントが関連していることを見出した.さらに,血尿と腎予後との関連も検討し,血尿を認める糖尿病性腎症では腎予後が悪いことも発見した.その研究成果については,日本腎臓学会シンポジウム,アメリカ腎臓学会総会で発表した.また,細小血管のヒアリノーシスと小動脈の内膜肥厚と心血管イベントの関連について Diabetic Medicineに発表した.また,さらなる解析で血尿を伴っている糖尿病性腎症患者の方が血尿を合併していない糖尿病性腎症患者に比べて腎予後が悪いことを見出し,BMJ Open Diabetes Research and Careに発表した.
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Diabetic Medicine .
巻: 37 ページ: 2143-2152
10.1111/dme.14301. Epub 2020 May 7.
BMJ Open Diabetes Research Care .
巻: 8 ページ: e001863
10.1136/bmjdrc-2020-001863.