本研究は,研究代表者が発見した新規骨髄由来細胞 CD45+C1q+CCR8+ cell[precursors of fibroblastic cell(preFC)] の臨床的,生物学的意義を,抗好中球細胞質抗体関連血管炎[ANCA associated vasculitis(AAV)]における臓器線維化を対象に追求,深化させるものである.その骨格は,①AAV症例におけるpreFCの測定と疾患活動性の評価,②マウスモデルを使ったpreFCの測定と臓器病変の検証,③preFCの除去による効果,の3つからなる.AAVでの臓器線維化における慢性炎症,およびpreFCの役割を明かし,新たな血液診断や治療薬の開発といった臨床応用に繋げることを目標にしている.平成31年度(令和元年度)は,引き続きヒト検体を用いた解析を行った.入院加療を開始した,初発および再燃のAAV 5症例から同意を得た上で,早朝かつ空腹時にEDTA採血を行った.速やかにCD45,C1qおよびCCR8抗体を用いた多重染色を行い,さらに溶血処理で赤血球を破壊・除去し,ホルムアルデヒドを用いて固定した.BD Biosciences社のFACSAria IIによるフローサイトメトリーおよび,トミーデジタルバイオロジー社のFlowJoによる解析により,血液中のpreFCを同定した.対照群は,健常者 5例,AAV以外の膠原病 5症例を新たに追加し,AAV症例と同様の解析を行ってCD45陽性単核球中のpreFCの割合をAAV症例と比較した.その結果,AAV症例において,血液中のpreFC/CD45陽性単核球比は,健常者およびAAV以外の膠原病症例より高値であった.
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