研究実績の概要 |
培養細胞を用いて、マクロファージに対するGLP-1受容体アゴニストの効果の有無を検討した。まず、単球系の培養細胞であるHuman monocytic leukemia (THP-1)細胞を、適切な濃度のPMAやLPSで刺激することでマクロファージへの分化を促した。THP-1細胞および上記の手法で分化させたマクロファージにおけるGLP-1受容体の遺伝子発現を調べたところ、THP-1細胞で認められていた発現はマクロファージへの分化に伴って大きく低下していることが分かった。このため、THP-1細胞からマクロファージへ分化誘導する全過程で、GLP-1受容体アゴニストで細胞を適切に継続的に処置することとした。適切な濃度のEx-4で処置したTHP-1細胞/マクロファージにおける、TNF-α, IL-6, IL-1b, MCP-1といった炎症や腹膜線維化に関連する遺伝子発現をリアルタイムPCRで評価した。すると、Ex-4によりこれらの遺伝子発現が改善することが明らかになった。さらに、上記のマクロファージ培養上清中のExosomeを超遠心法を用いて回収し、Western blottingの手法を用いてその存在を確認した。 動物実験においては、野生型C57BL/6 マウスにグルコン酸クロルヘキシジン溶液を21 日間隔日投与して作製した腹膜線維化モデルマウスをEx-4で処置した。Ex-4による処置によって、腹膜の組織学的評価では腹膜線維化の有意な軽減効果(腹膜壁(SMC)厚、腹膜のαSMA発現、F4/80陽性マクロファージ浸潤の軽減)を認め、また、腹膜組織中の腹膜線維化に関わる遺伝子発現(PAI-1、TNF-α、IL-6、TGF-β)の有意な減少効果を認めた。
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