研究課題/領域番号 |
18K15995
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
野村 尚弘 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (50735800)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カリウム / ナトリウム輸送体 |
研究実績の概要 |
1. 高カリウム(K)摂取によるカルシニューリン活性化の分子メカニズムの解明 Flp-inシステムを用いた薬剤誘導性NCC発現細胞株(Flp-in NCC HEK細胞)を用いた実験で、Western blottingにて、高K時にNCCのリン酸化が低下することを確認した。また、Fluo-4蛍光プローブを用いて、高K時に細胞内カルシウム濃度が上昇することを確認した。この高K時のNCCのリン酸化低下および、細胞内カルシウム濃度の上昇は、ナトリウム-カルシウム交換輸送体(NCX)1の阻害剤であるSEA0400を投与することで有意に阻害された。ニフェジピンなど他のカルシウム輸送体阻害剤ではこの抑制効果は認められなかった。マウスを用いた実験では、マウスにSEA0400を投与したところ、K負荷後の尿中K排泄の低下が認められた。このことから、高K負荷後の尿中K排泄促進に、NCX1を介した細胞内カルシウム濃度上昇、カルシニューリン 活性化、NCC脱リン酸化というメカニズムが関与していると推察される。 2. 低K食摂取時の血圧上昇におけるClC-Kチャネルの役割の解明。 ClC-Kクロライドチャネルのβサブユニットであるbarttin低発現マウスを用いた実験を行なった。通常、野生型マウスでは低K食を投与すると、WNK4-SPAK-NCC経路の活性が起こり、尿中K排泄の低下と血圧上昇が認められるが、barttin低発現マウスに低K食を投与しても、WNK4-SPAK-NCC経路の活性化は野生型に比較して有意に抑制させれていた。また、野生型マウスで認められる低K食による血圧上昇効果も認められなかった。以上より、カリウム摂取不足に伴う血圧上昇にClC-K/barttinによるクロライド輸送が関わっていることが、マウスレベルで証明された。この結果は、Biosientific Reports誌に報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高カリウムによるカルシニューリン 活性化、NCCの脱リン酸化メカニズムの解明について、鍵を握る輸送体として、ナトリウムーカルシウム交換輸送体(NCX)にターゲットを絞ることができた。これに関していくつか根拠となるデータがすでに得られている。 低カリウムによるWNK-SPAK-NCCシグナル伝達系の活性化メカニズムについて、ClC-Kクロライドチャネルの関わりの検討については、マウスモデルを使った実験を行い、すでに論文報告をしている。
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今後の研究の推進方策 |
高カリウムによるカルシニューリン の活性化およびNCCの脱リン酸化メカニズムについて、NCXの関与を明らかにするためのデータを蓄積する。 NCX1阻害剤を用いた実験について、阻害剤による実験のみならず、ノックダウンやノックアウトを用いて遺伝的に機能を抑える実験を行う。 NCXが全身に発現していることから、2次的な影響を除外するために、腎臓特異的ノックアウトや尿細管単離などの実験を行う。
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