• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

FKBP12の腎糸球体上皮細胞における機能の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K15996
研究機関新潟大学

研究代表者

安田 英紀  新潟大学, 医歯学系, 助教 (00806490)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワードネフローゼ症候群 / FKBP12 / 糸球体上皮細胞 / タクロリムス / カルシニューリン阻害剤
研究実績の概要

本年度は、ポドサイトにおけるFKBP12の機能とアクチン関連蛋白質の14-3-3、synaptopodinとの関連性を明らかにする為に、ヒト培養ポドサイトを用いたWestern blot (WB)、免疫染色 (IF)、Actin binding (AB) assayによる解析とHEK細胞への発現系を用いた免疫沈降法 (IP) による解析を行った。まず、WBによって培養ポドサイトでCyPAは細胞内に広く分布するのに対し、FKBP12は14-3-3、cortactinなどのアクチン関連蛋白質と類似した細胞内分布を示す事を明らかにした。IFによって、培養ポドサイトでCyPAは細胞質に広く発現するのに対し、FKBP12は細胞突起に向かい線維状に発現し、F-actinと共局在する事を明らかにした。AB assayによってFKBP12が14-3-3と同様にF-actinと相互作用する事を示した。また、糸球体でFKBP12が14-3-3β、synaptopodinと共局在する事を示し、IPによってFKBP12が14-3-3β、synaptopodinと相互作用する事を明らかにした。
培養ポドサイトにおけるFKBP12のノックダウンは14-3-3β発現を低下させ、F-actinの構造的変化と細胞突起形成の低下を引き起こす事を明らかにした。また、正常な培養ポドサイトに対するTac添加はFKBP12の細胞内分布を変化させ、細胞突起のF-actin近傍のFKBP12発現を増加させる事を示し、Tac添加が培養ポドサイトの細胞突起形成を増加させる事を明らかにした。
これらの結果から、ポドサイトのFKBP12は14-3-3、synaptopodinと結合し、アクチン細胞骨格の安定性と細胞突起の維持に関与する事を示し、TacはFKBP12の局在を変化させる事で細胞突起形成を促進する事を明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本年度はポドサイトにおけるFKBP12の分子機能を検討した。また、FKBP12とアクチン関連蛋白質である14-3-3、synaptopodinの関連性を解析した。
段階的に可溶化したヒト培養ポドサイトのlysateを用いたWBでCyPAは細胞内に広く発現するのに対し、FKBP12は14-3-3、cortactinなどのアクチン関連蛋白質に類似した細胞内分布を示した。IFでもCyPAは細胞質に広く発現するのに対し、FKBP12は細胞突起に向かい線維状に発現していた。二重染色によって培養ポドサイトでFKBP12がF-actinと共局在する事を示した。更に、AB assayによってFKBP12は14-3-3と同様にF-actinと相互作用する事を示した。糸球体のIFでFKBP12は、アクチン細胞骨格の維持において機能する14-3-3β、synaptopodinと共局在していた。培養ポドサイトとHEK細胞への発現系を用いたIPでFKBP12が14-3-3β、synaptopodinと相互作用する事を示した。
FKBP12をノックダウンした培養ポドサイトでは、脱リン酸化状態の14-3-3βの発現が低下し、F-actinの染色性、細胞突起形成が低下していた。正常な培養ポドサイトへのTac添加はFKBP12の細胞内分布を変化させ、細胞突起のF-actin近傍のFKBP12発現を増加させた。また、Tac添加は正常な培養ポドサイトの細胞突起形成を増加させる事を示した。
以上の所見から、ポドサイトのFKBP12は14-3-3、synaptopodinと結合してアクチン細胞骨格の安定性と細胞突起の維持に関与し、TacはFKBP12の局在を変化させる事で細胞突起形成を促進する事を示し、Tacの蛋白尿改善効果の新規薬効機序を明らかにしたため、本研究課題は当初の計画以上に進展していると考えた。

今後の研究の推進方策

FKBP12と14-3-3β、synaptopodinの詳細な分子間相互作用を解析する。具体的には、FKBP12とsynaptopodinを導入したHEK細胞で内因性の14-3-3βをノックダウンし、免疫沈降法によってFKBP12とsynaptopodinの相互作用が14-3-3βに依存的であるかを検討する。また、HEK細胞への発現系でFKBP12と14-3-3βの相互作用がsynaptopodinと14-3-3βの相互作用と競合的であるかを解析する。具体的にはFKBP12/14-3-3βの相互作用に対するsynaptopodinの導入の影響と、synaptopodin/14-3-3βの相互作用に対するFKBP12の導入の影響を免疫沈降法で検討する。
培養ポドサイトでsiRNAによる14-3-3βノックダウンの影響を検討する。siRNA処置した培養ポドサイトでリアルタイムPCR、Western blotによって14-3-3βのノックダウン効率を確認し、細胞の形態とアクチン細胞骨格への影響をF-actin染色によって解析する。また、培養ポドサイトにおける14-3-3βの細胞内分布に対するTac添加の影響を段階的に可溶化したlysateを用いたWestern blotによって解析する。更に、HEK細胞への発現系でFKBP12/14-3-3β/synaptopodinの相互作用に対するTac添加の影響を検討する。
また、これまでに得られた一連の所見をまとめて論文の投稿を行う。

次年度使用額が生じた理由

siRNAによるノックダウンやActin binding assay kitによる解析の条件確立が当初の計画より順調に達成されたため。
研究課題を更に進展させた解析の為に、HEK細胞への発現系やsiRNAによるノックダウンに関する試薬、抗体などの購入と論文の投稿に使用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Nephrin-Ephrin-B1-NHERF2-Ezrin-Actin Axis Is Critical in Podocyte Injury2021

    • 著者名/発表者名
      Fukusumi Yoshiyasu、Yasuda Hidenori、Zhang Ying、Kawachi Hiroshi
    • 雑誌名

      The American Journal of Pathology

      巻: 20 ページ: 00152-8

    • DOI

      10.1016/j.ajpath.2021.04.004

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] FKBP12は14-3-3、Synaptopodinと結合し、ポドサイトのアクチン細胞骨格と細胞突起の維持に関与する2021

    • 著者名/発表者名
      安田英紀、福住好恭、張瑩、河内裕
    • 学会等名
      第64回 日本腎臓学会学術総会
  • [学会発表] NHERF2はスリット膜の分子複合体とポドサイト頂部の分子複合体を連結し、ポドサイトの細胞骨格を維持する2021

    • 著者名/発表者名
      福住好恭、安田英紀、張瑩、河内裕
    • 学会等名
      第64回 日本腎臓学会学術総会
  • [学会発表] スプライスサイト4を持つNeurexin1αバリアントはスリット膜構造の維持に重要な役割を果たす2021

    • 著者名/発表者名
      福住好恭、安田英紀、張瑩、河内裕
    • 学会等名
      第64回 日本腎臓学会学術総会
  • [学会発表] タクロリムスはアクチン細胞骨格のFKBP12を保持する事でポドサイト傷害を軽減する2020

    • 著者名/発表者名
      安田英紀、福住好恭、張瑩、河内裕
    • 学会等名
      第63回 日本腎臓学会学術総会
  • [学会発表] PDZ蛋白質NHERF2はEphrin-B1とEzrinを連結させ、スリット膜機能維持に重要な役割を果たす2020

    • 著者名/発表者名
      福住好恭、安田英紀、張瑩、河内裕
    • 学会等名
      第63回 日本腎臓学会学術総会
  • [学会発表] 腎糸球体疾患とスリット膜2020

    • 著者名/発表者名
      福住好恭、張瑩、安田英紀、河内裕
    • 学会等名
      第93回 日本生化学学会
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi