研究課題
リソソームの転写因子であるTFEBの活性化に着目して研究を行っている。これまでに、TFEBの恒常的活性化および不活化変異をもつ培養糸球体上皮細胞を用いてTFEBの核内移行について検討した。簡便な細胞/核蛋白分離法を確立し、TFEB過剰発現細胞ではTFEBの核内移行が亢進することを確認した。さらに、恒常的活性化型TFEB過剰発現糸球体上皮細胞では、TFEBの核内移行が増加し、不活化型TFEB過剰発現細胞では、細胞質TFEB発現は増加するが、核内移行は低いことを確認した。高脂血症や高血圧モデルの疑似試薬による検討においては、飽和脂肪酸であるパルミチン酸の附置により、TFEBの発現および核内移行が増加すること明らかにした。さらに、恒常的活性化TFEB過剰発現細胞ではパルミチン酸附置によって誘導される細胞死を抑制すること、および恒常的不活性化TFEB過剰発現細胞では、細胞死の抑制を認めないことを明らかにした。以上のことから、TFEB活性化による細胞保護効果が明らかとなってきた。引き続き、細胞保護効果の機序についての検討を行っていく予定である。さらに、病態マウスモデルからの糸球体上皮細胞の単離を行い、コントロールマウスとのTFEB核内移行の比較を行っている。これまでに、マウスからの糸球体上皮細胞の単離法が確立でき、現在、様々なマウスモデルの作成および糸球体上皮細胞単離予定である。さらに、既報のTFEB活性化薬のマウスへの投与を行っている。実際に、TFEB核内移行を亢進させる薬剤の投与を行い、動物実験のプロトコール調整を行っているところである。
2: おおむね順調に進展している
本年度予定していた培養細胞を用いたTFEB活性化の効果についての可能性の評価、ならびにマウスを用いた動物実験への着手を行うことができた。現在、既報のTFEB活性化薬による細胞保護作用について培養および動物モデルを用いた検討を行っている。
引き続き、糸球体上皮細胞におけるTFEB活性化/不活化によるリソソーム機能の変化が細胞に及ぼす影響を評価するとともに、遺伝子改変マウス並びに培養細胞を用いた検討を行う。
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