本計画は、転写因子MAFBによるオートファジー制御機構の検討を進めることにより、オートファジーの活性化を介した慢性腎臓病の新規治療法の解明を目指すものである。 本年度は、動物実験へ進む前の段階として、昨年度に作成した培養系糸球体上皮細胞を用いて、MAFBの発現調整によりオートファジー活性に変化が現れうるのか、さらにオートファジー関連蛋白に変化が現れるのか、確認実験を実施した。 ヒト培養糸球体上皮細胞に対し、活性型・ドミナントネガティブ型・抑制型・通常型MAFBベクターをそれぞれ導入し、薬剤誘導性に転写因子MAFBの発現量を変化させることのできる細胞株を作製した。ドキシサイクリンの薬剤刺激により、これらの細胞においてMAFB蛋白の発現が調節されることをウエスタンブロッティング法で確認した。引き続き、これらの細胞を用いて、ウエスタンブロッティング法でオートファジーの活性を評価した。オートファジーの活性化マーカーであるLC3II蛋白の発現が、MAFB過剰発現群で増加し、MAFB抑制群で減少した。この結果は、MAFBの発現が増加するとオートファジーが活性化し、MAFBの発現が減少するとオートファジーの活性が抑制されることを意味すると考えられる。 本年度ではさらにMAFB活性株・抑制株において発言量の変化したオートファジー関連蛋白について検討を進め、制御機構について検討を進めている。 これらの結果は、転写因子MAFBが転写を通じてオートファジーの活性を制御していることを示唆するものである。引き続き、当初の計画通り検討を進める。
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