研究課題
申請者らのグループらは慢性腎臓病の筋委縮のメカニズムを電解質・体液バランスや交感神経の観点から解明し、新しい筋委縮の予防・治療法開発に繋げることを目標としている。これまでに高食塩食と生理食塩水の同時投与がマウスの体内の異化を亢進、心拍数を低下させ、心血管系のエネルギー消費の抑制をもたらすことを報告している。これは高食塩食が交感神経活性の抑制を介して心拍数を低下させ、高食塩誘導性の異化を抑制していることを示唆している。当該年度ではラットにおいて直接的に腎交感神経活動を測定することで、高食塩食摂取時の腎交感神経の意義について検討した。まず意識のあるSprague-Dawley(SD)ラットの腎交感神経活動(RSNA)をradiotelemetry systemを用いて直接測定することに成功した。結果、4%食塩食と生理食塩水を投与することで、SDラットでは異化が亢進することが分かった。また4%食塩食と生理食塩水の同時投与は心拍数を減少させ、同時にRSNAを減少させた。一方、Dahl食塩感受性(DSS)ラットにおいては、高食塩食を摂取しても心拍数の変化は認められず、RSNAはむしろ増加していた。4%食塩食+生理食塩水を投与したDSSラットに対して腎除神経を施行すると、心拍数は有意に減少し、血圧に依存せず異化を抑制した。このことから、食塩感受性を有する動物は高食塩食摂取時に腎交感神経が活性化することで、心血管系のエネルギー消費量を減少させることができない可能性が示唆された。また、DSSラットでは高食塩食の摂取でも心拍数が低下せず、RSNAがむしろ亢進している現象は、食塩感受性高血圧の重要なdiagnostic factorとなる可能性がある。腎除神経は、異化作用および心血管系のエネルギー消費量への影響を減少させることにより、食塩感受性高血圧の治療に付加価値を与えるものになりうる。
3: やや遅れている
申請者らのグループらは慢性腎臓病の筋委縮のメカニズムを電解質・体液バランスや交感神経の観点から解明し、新しい筋委縮の予防・治療法開発に繋げることを目標としている。当該年度の研究結果から、高食塩摂取における腎交感神経活性の意義は明らかとなってきており、食塩感受性の有無により、腎交感神経活動に違いが生じ、体内の異化に対する挙動が異なることが判明した。また腎除神経が、異化および心血管系のエネルギー消費量への影響を減少させることが、マウスやラットの研究から判明した。しかし、慢性腎臓病モデルへの応用が現時点では進んでいない。理由としては大きく分けて2つあり、筋肉特異的アルギナーゼ欠損マウス(MCKcre arginase-1 flox/flox)の作成が進んでいないこと、慢性腎臓病モデルに対して腎除神経処置を均一に行う体系が確立していないことがある。慢性腎臓病モデルとして汎用される5/6腎摘モデルに対して、腎除神経処置を行い、腎内ノルエピネフリン量を測定することで腎除神経処置の可否を判定しているが、腎内ノルエピネフリン量に個体差がある状態である。5/6腎摘を行う際に、部分的に腎交感神経が切断されている可能性があり、今後の課題である。
1腎除神経が高食塩摂取下において異化を抑制するメカニズムを検証する。現在は腎除神経処置を行った高食塩摂取マウスの尿を経時的に採取し、尿量や尿中Na、K、Ureaといった電解質を測定している。また体内のNa含量を炎光光度計により測定する。さらに腎除神経における代謝の変化をより詳細に検討するために、肝臓における尿素回路を含めたメタボローム解析を行う。2筋肉特異的アルギナーゼ欠損マウス(MCKcre arginase-1 flox/flox)の作成を進める。また本研究では慢性腎臓病モデルに対して腎除神経処置を行う必要があるが、腎除神経処置を均一に行う体系が確立していない。慢性腎臓病モデルとして汎用される5/6腎摘モデルに対して、腎除神経処置を行い、腎内ノルエピネフリン量を測定することで腎除神経処置の可否を判定しているが、腎内ノルエピネフリン量に個体差がある状態である。5/6腎摘を行う際に、部分的に腎交感神経が切断されている可能性があり、アデニン投与や片側尿管閉塞による尿細管間質障害といった別の慢性腎臓病モデルを含めて検討を行う。
すべて 2020
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Hypertension research
巻: Epub ページ: Epub
10.1038/s41440-019-0389-1