研究課題
高血圧とそれに伴う心血管リスクにおいて、性差があることは以前から知られており、エストロゲンが何らかの形で臓器保護にはたらくことが推測されている。今年度、本学が多施設共同研究の1施設として参加しているJPAS研究の成果として、当教室より、女性であることが原発性アルドステロン症手術後の高血圧予後改善に大きく寄与することを、日本人の大規模コホートを用いて明らかにした(Morisaki et al. J Endocr Soc, 2019)。このことは、アルドステロン過剰を伴う高血圧においても、エストロゲンが何らかの形で臓器保護にはたらいていることを示唆し、閉経前女性の原発性アルドステロン症患者において、臓器障害マーカーである尿中アルブミン量と血中エストロゲン値に有意な負の相関があることを示した、当院の臨床研究結果(現在、論文リバイス中)を支持するものであった。基礎研究においては、アルドステロン過剰の病態におけるエストロゲンの関与を明らかにするため、アルドステロンの受容体、すなわちMRの主たる発現臓器である腎臓および腸管において、エストロゲン関連遺伝子の発現評価を行った。腸管においては、ERαおよびERβともに、空腸、回腸、結腸と腸管全域に均一な発現を認め、空腸においては、ERβがアルドステロン投与で増加する傾向を認めた。ERRα、ERRβ、ERRγも同様に、空腸、回腸、結腸と腸管全域に均一な発現を認め、ERRγが、結腸においてMR作用による調節を受けている可能性が示唆された。MRおよびER双方の標的として知られているICAM-1が、MR作用により空腸で発現上昇が見られることを確認しており、ERβを介した発現修飾が見られるか評価を行う。一方、腎臓においては、ERαがMR作用過剰により発現上昇することを示唆する結果が得られており、サンプル数を増やして検討していく予定である。
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