糸球体足細胞とその足突起間に存在するスリット膜と呼ばれる構造が蛋白尿と密接に関連する濾過障壁機構であるが、スリット膜の足細胞突起側には、ポドシンをはじめとする蛋白質が集積して複合体を形成し、足細胞内でCD2AP等のアダプタータンパク質を介してアクチン細胞骨格と連結している。我々の研究によりポドシンは足細胞障害時に細胞膜からエンドソーム内へ局在変化することが明らかとなったが、その後リソソームへと運ばれ分解されるか、あるいはリサイクリン グエンドソームにより細胞膜へ戻るかについては解明できていない。我々はNEFHがポドサイトの細胞骨格を形成する蛋白であるシナプトポディンの分解やポドサイト脱落を抑制することによりポドサイト障害を防ぐことを解明した。また、DPP4阻害薬がシナプトポディンの分解やポドサイトの形態機能維持を担うRhoAの発現低下を抑制することによりポドサイト障害を防いでいる可能性があることを論文化した。そして、Rhoファミリーの一員であるRac1がmTORとともにポドサイトの細胞の大きさを保持することで、構造を維持し糸球体硬化を抑制していることを解明できた。蛋白分解酵素であるカテプシンLは腎障害時に発現が亢進しスリット膜や細胞骨格関連蛋白を過剰に分解し蛋白尿をもたらすことが知られているが、カテプシンLとその阻害物質であるシスタチンCの発現は一致しないことを明らかにすることができ、蛋白分解酵素とその阻害物質の分泌のバランス変化が糸球体基底膜からの糸球体足細胞の脱落だけでなく、糸球体の透過性亢進につながる糸球体基底膜分解を誘発する可能性があると考えている。SNX9とNPC2の十分な機能解析を行うことが出来なかったが、上記の成果により足細胞障害の機序の一端を明らかにすることができた。
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