副甲状腺摘出術(PTx)は治療薬に対する抵抗性を持った、進行した二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)で施行される。最近の当院でのPTxにより摘出された副甲状腺とその周辺組織の調査から、腺被膜外の脂肪組織中に副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌を検出する例が多数見つかり、免疫組織化学により、この脂肪組織中に副甲状腺実質細胞と似た形態を持つPTH産生細胞からなる小さなコロニーが多数検出された。 本研究では過形成副甲状腺を取り巻く脂肪組織中に存在する異所性PTH産生細胞の由来を明らかにすると共に、過形成副甲状腺周囲に脂肪が蓄積する機序について明らかにすることを目的に調査を行った。 免疫不全ラットを5/6腎摘してSHPTモデルとし、PTxで摘出されたヒト副甲状腺の実質部分を甲状腺下に移植したところ、移植片周囲での脂肪組織の蓄積は見られなかったが、移植1ヵ月後には脂肪分化マーカーであるPPARγとPerilipin2が全ての移植片のほぼ全域にわたり検出され(8例中8例)、副甲状腺細胞が脂肪分化している可能性が示された。同様の移植を腎臓へ行った場合には移植片の脂肪分化は見られなかった。 移植後6ヶ月を経た移植片では実際に脂肪細胞形態である大きな油滴を持つ細胞が多数観察され、残った副甲状腺細胞はまさにPTxで摘出された副甲状腺の周囲脂肪組織に見られる異所性PTH産生細胞コロニーと同じ形態を示していた。これらの結果は、脂肪組織中の異所性PTH産生細胞だけでなく副甲状腺を取り巻く脂肪組織細胞もまた過形成副甲状腺に由来するものである可能性を示唆しており、これらが過形成の過程で多結節腺または単一結節腺を形成する際に被膜外へ押し出された副甲状腺細胞に由来するものであると考えられた。 結果の一部は論文として報告した(Kakuta et al. Scientific Reports 2020)。
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