プロトンポンプ阻害剤は広く使用されている胃酸抑制薬であり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療や予防のみならず、逆流性食道炎の治療、抗血小板薬などの併用により以前より処方頻度が広まっている。またプロトンポンプ阻害剤は血液透析患者を始めとする腎不全患者でも広く使用されている。CYP2C19はプロトンポンプ阻害剤の代謝に関与する遺伝子多型であり。多型によりプロトンポンプ阻害剤の代謝が異なり血中濃度に影響することが知られている。一方で腎不全患者でCYP2C19を解析した研究はなされておらず、特にプロトンポンプ阻害剤の長期的な各種副作用との解析はなされていない。CYP2C19遺伝子の腎不全患者に与える影響について多面的なアプローチで本研究は調査を行った。研究期間を通じてCYP2C19遺伝子多型の解析方法を確立し、登録患者の遺伝子解析を行う道筋を立て解析を行った。解析対象は血液透析患者1350名の前向きコホート研究にて実施した。併せて登録患者の予後調査(全死亡、心血管疾患、骨折、感染症)を実施しアウトカムとの確認をおこなった。結果としてプロトンポンプ阻害剤の使用は腎不全患者の全死亡、感染症の発症、骨折に有意に関与することを見出した。いずれのアウトカムも非内服群に比べて高率であった。またこれらの影響がCYP2C19の3群に分けた遺伝子多型により異なる可能性が示唆された。現在、上記結果について論文化を進めておりプロトンポンプ阻害剤の処方に対する個別化医療の実現につなげていく。
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