研究課題/領域番号 |
18K16014
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
高島 康利 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 専攻医 (10797070)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 / 腎移植 / バイオマーカー / 接着分子 / CADM1 / CRTAM |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病の残腎機能は尿細管間質障害と強く相関することから、尿細管間質の慢性炎症と間質線維化が不可逆的な腎機能障害の主病態と認識されている。しかし、その病態機序はあまり解析されていない。本研究では、尿細管の変性に関与する細胞間接着分子であるCADM1 (cell adhesion molecule 1) とCADM1のヘテロフィリックな結合パートナーであり細胞障害性T細胞膜上に発現するCRTAM (class 1-restricted T cell-associated molecule) が結合することでT細胞が活性化されることに着目して、尿細管上皮の変性とそれに随伴する間質炎症という普遍的な病変形成を制御する分子機構を解明することを目的としている。 申請者は京都府立医科大学医学部附属病院 病理部へ赴任してまもないため、ヒト検体及び培養細胞を用いた実験環境を整備する必要があった。そこで、本年度は医学倫理審査委員会の承認を得て、慢性腎臓病及び移植腎臓を対象に尿細管変性後に尿細管間質で炎症が惹起され遷延する機序に関する病理組織学的解析を優先して行った。その結果、原発性糸球体疾患による慢性腎臓病を罹患した症例で、尿中CADM1濃度が尿細管間質障害に伴う腎機能低下と相関することを明らかにしたが、尿細管間質へのT細胞浸潤の重症度とは有意な相関を示せなかった。慢性腎臓病の大半を占める原発性糸球体疾患による間質細胞浸潤は限局的で軽度であることが多く、浸潤細胞はT細胞や形質細胞、マクロファージなど多彩であるため、尿細管変性とT細胞浸潤の関連性を形態学的に評価することも難しかった。そこで、様々な程度の尿細管障害と細胞障害性T細胞の間質浸潤を特徴とするT細胞関連型拒絶反応を呈した移植腎臓を研究対象に加えて、細胞障害性T細胞におけるCADM1とCRTAM結合の有無、尿中CADM1濃度と拒絶反応に伴う形態学的変化との相関性を病理組織学的手法を用いて解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CADM1細胞外領域認識単クローン抗体を用いて尿中CADM1濃度を測定するELISAを作製し、慢性腎臓病患者の尿中CADM1濃度を測定したところ、尿細管間質病変や腎機能低下の重篤度と相関することを明らかにした。さらに、尿細管間質に細胞障害性T細胞が浸潤するメカニズムについて分子病理学的解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、移植腎臓を対象に拒絶反応時のCADM1の細胞障害性T細胞制御機序を組織学的に解析しており、この研究成果は尿細管間質病変形成におけるCADM1の病的意義を検討する上で有用であるだけでなく、腎移植後の拒絶反応を定量的に測定する非侵襲的臓器障害マーカーとしての尿中CADM1濃度測定の臨床的意義付けに欠かせないと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
病理組織学的検討を優先した結果、所属部署での既存の研究資源を最大限に活用することができ、試薬類の購入を抑えられたことで、次年度使用額が生じた。 研究環境の整備も進んだため、当初の研究計画をより推進するための試薬を購入する予定である。
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