研究課題
慢性腎臓病の残腎機能は尿細管間質障害と強く相関することから、尿細管間質の炎症と間質線維化が不可逆的な腎機能障害の主病態と認識されているにも関わらず、その病態機序はあまり解明されていない。本研究では、尿細管の変性に関与する細胞間接着分子であるCADM1 (cell adhesion molecule 1) とCADM1のヘテロフィリックな結合パートナーであり細胞障害性NK細胞膜上に発現するCRTAM (class 1-restricted T cell-associated molecule) が結合することでNK細胞が活性化されることに着目して、尿細管上皮の変性とそれに随伴する間質炎症という普遍的な病変形成を制御する分子機構を解明することを目的としている。当院で腎生検を受けた症例を対象に、免疫組織化学法により遠位尿細管にCADM1発現を確認した上で、ELISA法で尿中CADM1 shedding産物量(平均値±標準偏差(μg/gCre))を測定した。サブセット解析では、発症機序に血管内皮細胞障害が関与する尿細管間質障害を示す腎疾患において尿中CADM1 shedding産物量が高値であったことから、非侵襲的に血管内皮細胞障害を捉えるバイオマーカーとして尿中CADM1 shedding産物量測定が有用であることが示唆された。現在、血管内皮細胞障害による慢性的な腎低潅流が引き起こす間質の炎症にCADM1 shedding産物とCRTAMの複合体形成が果たす役割を明らかにするため、ヒト初代培養尿細管上皮細胞のCADM1をレンチウイルス粒子を用いてノックダウンし、不死化したヒトNK細胞との共培養系を確立することで、細胞障害性因子を介した血管内皮細胞障害や尿細管炎の発症及び進展におけるCADM1の役割を解析している。これらの成果は、国際学会 [Asian Pacific Congress of Nephrology 2021]で発表予定である。
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Frontiers in Cell and Developmental Biology, section Molecular Medicine
巻: 664327 ページ: 664327
Applied Immunohistochemistry & Molecular Morphology
巻: 29 ページ: 313~320
10.1097/PAI.0000000000000875