研究実績の概要 |
全身性強皮症は、皮膚や臓器の線維化(硬化)と血管異常、免疫異常を生じる原因不明の難病である。我々の研究グループは、強皮症に伴う末梢循環障害であるレイノー現象や手指潰瘍に対してボツリヌス毒素を投与し、良好な治療効果が得られることを見出した。また、ボツリヌス毒素が虚血による酸化ストレス障害を抑制することにより、皮膚の虚血再還流障害を改善することも見出した。最近、ボツリヌス毒素は免疫機能や線維芽細胞増殖能など、様々な細胞機能を制御することが注目されており、ボツリヌス毒素の持つ様々な作用を応用すれば新たな治療薬としての可能性も期待できる。そこで本研究では、強皮症由来線維芽細胞やブレオマイシン誘発強皮症モデルマウスに対するボツリヌス毒素の治療効果を明らかにし、その機序を解明することが目的である。 ブレオマイシン誘発強皮症モデルマウスの病態(皮膚線維化、血管障害)に対するボツリヌス毒素の治療効果について検討し、その機序も明らかにしつつある。血管障害による低酸素が誘導する酸化ストレスが線維化に関与することが示唆されているため、酸化ストレス障害に対するボツリヌス毒素の影響についても検討を行っている。強皮症患者由来皮膚線維芽細胞を数種類用いて、線維化に関与する因子である、1型コラーゲン、TGF-β, CTGF, αSMA, MMP, TIMPなどの発現や酸化ストレスに関する因子の発現に対するボツリヌス毒素の影響について、免疫染色、ウエスタンブロット法、リアルタイムPCR法を用いて検討を行った。本研究の成果によって、強皮症の皮膚線維化の新たな治療法の開発が期待できる。
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