SJS/TENをはじめとする重症薬疹は、発症は稀であるものの、ひとたび発症すると重篤になりやすく未だ死亡率も高い。しかし早期診断、重症度予測できるようなバイオマーカーは十分検討されてこなかった。そのため当該分野では未施行であるプロテオーム解析を用いた網羅的な探索を取り入れることで新規バイオマーカー候補を発見した。 SJS/TEN患者と重症ではない通常薬疹患者の末梢血単核球を原因薬剤で刺激した培養上清を用いて、質量分析を行い、SJS/TEN患者のみにみられた候補タンパクを絞りこんだ。さらにtarget proteomicsによりタンパク発現量を定量し、上位のもの7種を同定した。そのタンパクを、SJS/TEN患者血清や通常薬疹患者、健常者の血清を複数サンプル用いELISAにて測定。健常者や通常薬疹患者と比較し、有意に上昇している1種のタンパクを同定した。自己免疫性水疱症やウイルス感染症等でも上昇していないことを確認し、またAUC解析による特異度などを検討した上で、バイオマーカーとして十分利用可能であると考えた。ここまでの研究成果について論文化し、Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice 誌に2019年5月に受理された。最終年度には日本皮膚科学会総会をはじめとした学会の講習会で講演する機会を得た。日本各地の皮膚科からgalectin-7の測定を依頼されることもあった。今回の研究では迅速診断キットの作成まではできなかったが、今後は臨床応用を念頭に共同研究も進めていく。
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