研究実績の概要 |
<研究目的> 本研究は, メラノーマ細胞において、PITX1による増殖抑制経路の分子機構を明らかにすることを目的としている。 <研究結果> 申請者は, これまでメラノーマ細胞株A2058へのPITX1の発現誘導実験により, 細胞の増殖能を抑制できることを明らかにしている。本年度は、PITX1発現誘導の際に現れた細胞死を含めた増殖抑制の形質変化の原因を具体的に明らかにするために, in vitroでの実験を行った。PITX1発現ウィルスベクターを用いてA2058へPITX1を発現させ, アポトーシスのマーカーであるアネキチンVにより染色し, フローサイトメーターで細胞の陽性率を検出した結果, コントロール群と比較して, 有意にアネキチンV陽性細胞が増加した。また, 現象の再現性を確認するために, 別のメラノーマ細胞株であるSKMEL28細胞を用いて, 同様にPITX1の発現誘導を行った結果, SKMEL28でもコントロール群と比較して, 有意にアネキチンV陽性細胞が増加した。この結果から, PITX1はメラノーマ細胞株においてアポトーシスを誘導する機能があることが示唆された。次に, アポトーシス誘導の詳細な分子経路を明らかにする目的で, PITX1の下流で機能する遺伝子の同定をChIP-seqの解析結果を基にして試みたところ, 遺伝子Aの可能性が示唆された。遺伝子Aは, PITX1の発現誘導に伴って発現上昇することをタンパクレベルで確認している。これらの結果から, PITX1によるメラノーマ細胞の増殖抑制の原因の一つがアポトーシスであることに加えて, その分子経路に遺伝子Aが関連していることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
PITX1が転写因子であることからPITX1タンパクが遺伝子Aのプロモーターを直接制御している可能性を検討するために, 遺伝子Aプロモーターをルシフェラーゼの上流にクローニングしたベクターを用いてレポーター解析を行う。遺伝子Aプロモーター上流にPITX1結合配列結合モチーフが2カ所の存在することを確認している。この実験により, PITX1によるメラノーマ細胞の増殖抑制効果における分子経路の詳細を明らかにする。また, メラノーマの薬物治療における問題点となっている薬剤耐性株においても, PITX1による抑制効果が認められるか検討を行う予定である。
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