研究実績の概要 |
<研究目的> 本研究は、メラノーマ細胞において、PITX1による増殖抑制経路の分子機構を明らかにすることを目的としている。 <研究結果> 昨年度までの研究成果より、PITX1の発現誘導に伴って発現上昇する遺伝子Aを同定した。さらに、PITX1が転写因子であることからPITX1タンパクが遺伝子Aのプロモーターに直接的に結合し、その発現を制御していることを明らかにした。本年度では、in vivoでのPITX1による抗腫瘍効果を確認するために、マウス皮下腫瘍モデルを用いた解析を行った。その結果、PITX1発現群においてコントロール群と比較して腫瘍体積の縮小および重量の低下が認められた。また、腫瘍塊を取り出し、免疫組織化学染色により、PITX1の発現にともなった遺伝子Aの発現誘導と遺伝子Bの発現低下を確認した。加えて、増殖マーカーであるKi-67の発現低下とアポトーシスマーカーであるCL-Caspase3の発現上昇も確認した。一方、データベース上(GEO)のRNA-seqデータを用いてメラノーマ組織におけるPITX1, 遺伝子A, 遺伝子Bの発現を解析した結果、PITX1と遺伝子Aは正の相関性を遺伝子Aと遺伝子Bは負の相関性を示すことを確認した。
以上の結果から、PITX1による遺伝子Aの発現誘導は、遺伝子Bの発現抑制を介して、メラノーマ細胞の増殖を阻害する新規がん抑制経路(PITX1/遺伝子A経路)の存在が示唆された。
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