研究課題/領域番号 |
18K16031
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岩本 和真 広島大学, 病院(医), 助教 (20457237)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | アトピー性皮膚炎 / 黄色ブドウ球菌 / Microbiome / Cell wall protein / ケラチノサイト |
研究実績の概要 |
アトピー性皮膚炎(AD)は、長期にわたり皮膚炎を繰り返す慢性疾患である。AD患者では、皮膚から黄色ブドウ球菌(S. aureus)が高率に検出されることが知られているが、なぜS. aureusがAD皮膚に定着し、なぜ 皮膚炎が持続するのかについては解明されていない。我々はこれまでAD患者皮膚より単離したS. aureus(AD株)が標準株のS. aureusとは異なり、ADに特徴的な反応であるTh2型の皮膚獲得免疫を誘導することを報告してきた。本研究では、AD株に特異的なS. aureusの性質に注目し、S. aureus定着に関与するケラチノサイト(KC)での自然免疫応答を検討した。 まず形態学的なアプローチを行い、それぞれの株のS. aureusがKCに接着する量や取り込まれる経路(KCへの侵入)について解析を行った。AD株はケラチノサイトに高率に取り込まれ、リソソームに蓄積した。この内包化の現象は標準株や健常人で多く定着する表皮ブドウ球菌では見られず、一方で数種類のAD皮膚由来のAD株では多くの株で取り込みが確認できた。これらの取り込みはAD株の表層タンパクをProteinase Kで処理、除去することで消失し、さらに取り込みに関する経路に関わるFibronectinを阻害することでも、取り込みの消失が確認できた。さらに、KCに与える免疫応答については、AD株はKCへ取り込まれたのちに、TLR9を介してIL-1αなどの炎症性のサイトカインを誘導した。なお、S. aureusの自然免疫の受容体となるTLR2を阻害しても、これらの産生には影響しなかった。AD株はKCに対しても、特異的な免疫反応を誘導することが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、①S. aureus(AD株)の定着に関する形態学的およびケラチノサイトの応答機序の解析、②AD株に特異的な表層タンパクの同定、③AD株を排除する新規治療法の探索を予定している。現在、①と②の一部が終了し、③についても基礎検討を開始しており、計画は順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、AD株の特徴を決定づける分子の検討を行うとともに、これまでに得られた形態学的な違いを元に、ハイスループットスクリーニングシステムを用いてAD株の阻害薬の探索を行う予定としている。
|