研究実績の概要 |
本研究は創傷治癒の分子機構を「上皮-間葉移行(Epithelial-Mesenchymal Transition: EMT)」および「間葉-上皮移行(Mesenchymal-Epithelial Transition: MET)」の観点から解明し、難治性皮膚潰瘍に対する新たな治療標的を創出する。 C57BL/6Jマウス背部に6mmパンチメスで肉様層に至る創傷を作成し、EMT誘導モデルとしてFGF2を連日局所投与し、創をday 2, 4, 6, 8, 10で回収し組織標本を作成した。まず表皮角化細胞遊走時(EMT)~再上皮化時(MET)に至る形態変化についてHE標本で観察したところ、day4にて卵円形から紡錘形に変化し遊走する表皮角化細胞が最も顕著に見られ、再上皮化するday8以降はすべて卵円形に戻っていた。それぞれのタイミングにてEMTを評価し得る細胞骨格・接着分子としてpan-keratin, vimentin, E-cadherinの蛍光抗体法を行ったところ、day4にてEMTを想定させうる蛍光パターンが観察された。また同じタイミングの標本について、EMT関連転写因子としてSnail, Slug, Twist,βcatenin, Claudin1, Notch1の免疫染色をしたところ、Snail, Slug, βcateninはday4をピークとして蛍光を示したがday8では消失しており、他の分子はいずれのタイミングにおいても明瞭な蛍光を示さなかった。
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今後の研究の推進方策 |
予備実験において、創全体のEMT関連蛋白をPCR arrayでスクリーニングしている。その中で、一般的にEMT(あるいはMET)誘導に関わるサイトカイン(TGFβ, EGF, HGF, FGFなど)の経時的定量をRT-PCR及びwestern blotで行う。 それまでの検討で注目したEMT-MET関連分子あるいは誘導蛋白について、in vitroで検討を行う。HaCaT cellあるいはprimary keratinocytesを、まずはEMT誘導蛋白添加培養して、scratch migration assayを行い、細胞遊走能の評価、EMT関連分子の発現を確認する。また、注目したEMT関連転写因子の遺伝子をトランスフェクションし細胞内で蛋白を過剰発現させ、EMTに至るか形態学的及び免疫染色にて確認、さらにその蛋白を阻害剤にてノックダウンしEMTからMETし元の細胞性質に戻り得るかを検討する。
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