研究課題/領域番号 |
18K16036
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
中村 元樹 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (70645051)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 芳香族炭化水素受容体 / UVA |
研究実績の概要 |
芳香族炭化水素受容体(AHR)は、皮膚のUVBストレス反応における重要なメディエーターである。UVB暴露による皮膚の炎症、免疫抑制、皮膚癌の発生などは、トリプトファンの光産物である6-formylindolo[3,2b]carbazole(FICZ)によっては活性化されたAHRを介して引き起こされる。FICZはそれ自体がUVA毒性を持っており、我々は、AHRはcytochrome P450(CYP)1A1を誘導しFICZを代謝することでUVAから皮膚を守っているという仮説を立てた。 0nMから100nMのFICZを細胞に添加したところ、AHRの活性化に伴うCYP1A1の誘導は1nM~10nMのFICZ濃度で有意差をもって確認された。またそれ自体では無害な照射量である5J/cm2のUVA照射下で10nM~100nMのFICZ添加によりアポトーシスの有意な増加が認められた。 HaCaT細胞をAHRアゴニスト・β-naphthoflavone(βNF)で処理し、100nMのFICZ添加と5J/cm2のUVA照射を行い、caspase-3 assayでアポトーシスを評価した。AHR活性時にはFICZの代謝が増え、UVA毒性は減弱することを確認した。遺伝子的な阻害としてAHRノックアウトHaCaTを使用した。AHRの阻害によりFICZを代謝するCYP1A1が減り、UVA毒性は増強することも確認でき、AHR活性によるFICZ代謝の増減で、UVA毒性はコントロールが可能であることが証明できた。 次にAHR-KO HaCaTにUVB 400J/m2照射2時間後にUVA 5J/cm2照射を行ったところ、AHR阻害時にはアポトーシスが増えることが観察できた。このことは自然界において、UVBにより生成されたFICZもUVA毒性を持ち、それはAHRの存在により無効化されていることの証明となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展している。 本研究では次の3つの仮説を証明する予定である。1:AHR活性によるFICZ代謝の増減で、UVA毒性はコントロールが可能である。2:太陽紫外線(UVB+UVA)暴露下でのFICZ/UVA毒性はAHRにより制御されている。3:FICZ/UVA光毒性は紫外線発癌防御機構として働いている。 現在までに1,2を証明することができ、今年度は3を証明するため、マウスによる実験を計画中である。
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今後の研究の推進方策 |
FICZ/UVA光毒性は光発癌防御機構として働いていることをマウスを用いた実験で証明する。 紫外線発癌のモデルマウスとしてXPA遺伝子欠損マウスを用いる。XPA遺伝子欠損マウスではヌクレオチド除去修復(NER)が働かず、UVB暴露により容易に扁平上皮癌を発症する。この実験ではトリプトファン含有飼料によりFICZ量をコントロールし、発癌の増減を調べる。UVB暴露によりトリプトファンから生成されるFICZは、UVA増感作用により通常では無害なUVA暴露量でアポトーシスを起こすため、トリプトファン含有飼料を食べていたマウスは非含有飼料を食べていたマウスよりsun burnが増える代わりに、扁平上皮癌の発生が少ないことが予想される。
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