研究課題/領域番号 |
18K16037
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
御守 里絵 奈良県立医科大学, 医学部, 特任助教 (20533722)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | EGFR阻害薬 / 薬疹 / 抗菌ペプチド / 自然免疫応答 |
研究実績の概要 |
EGFR阻害薬は上皮系悪性腫瘍の治療に広く用いられているが、その一方で、様々なタイプの特徴的な薬疹を高率に生じることが知られている。しかし薬疹発症の詳細なメカニズムについては未だ不明な点が多く、効果的な治療法に乏しい状況である。これまでにわれわれは、EGFR阻害薬がブドウ球菌刺激由来の抗菌ペプチドβ-defensinの産生を選択的抑制することを明らかにしてきた。この結果は、EGFR阻害薬による薬疹の発症に皮膚自然免疫応答が密接に関わっていることを示唆している。本研究では、EGFR阻害薬が実際のヒトの皮膚の自然免疫応答に及ぼす影響について研究し、分子標的治療薬による皮膚障害の病態解明を目指している。 本年度は、昨年度に引き続き抗EGFRモノクローナル抗体(EGFR mAb)投与患者の解析対象症例数を増やし、薬剤投与前および投与後における患者両頬部のβ-defensin発現量の測定を行った。さらにこれらの患者について、薬剤投与後に生じた皮膚症状の解析を行った。全解析対象患者22名のうち14名で薬剤投与後にざ瘡様皮疹を生じたが、症状の重症度の差は認められなかった。ざ瘡様皮疹を生じた患者においては、薬剤投与後に角質中のβ-defensin-1および-3の産生レベルが有意に減少し、β-defensin-2も減少傾向を示した。一方、ざ瘡様皮疹を発症しなかった患者においては、β-defensin発現量の変化についての明らかな傾向は認められなかった。また、薬剤投与前後のβ-defensin発現量の変化について、サブタイプ毎の相関を解析したところ、β-defensin-1とβ-defensin-3、および、β-defensin-2とβ-defensin-3の間で正の相関関係を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EGFR阻害薬が皮膚自然免疫応答に影響を及ぼし、それに伴い、薬剤によるざ瘡様皮疹の発症が認められた。今回の研究結果は、EGFR阻害薬による皮膚症状の発症機序に、β-defensinが深く関与している可能性を示唆するものであり、分子標的治療薬による薬疹の治療法の手がかりや予防法の開発に貢献できるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
EGFR阻害薬により生じたざ瘡様皮疹においては、黄色ブドウ球菌などの細菌感染が認められることが報告されている。皮膚の自然免疫応答と密接に関わっている皮膚細菌叢の解析は、EGFR阻害薬による皮膚症状発症機序の解明に繋がる。今後は、EGFR阻害薬投与患者における皮膚細菌叢について、その構成菌種や菌量の網羅的解析を行い、細菌とEGFR阻害薬による皮膚障害および皮膚自然免疫応答との関わりについての検討を進める。
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