研究課題/領域番号 |
18K16043
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研究機関 | 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
井上 維 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 共同研究員 (30750442)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | PP6 / 触媒サブユニット / ケラチノサイト / メラノサイト |
研究実績の概要 |
我々は、これまでの研究で、脱リン酸化酵素PP6の触媒サブユニット(Ppp6c)が皮膚がん(非メラノーマ)の抑制遺伝子であることを、遺伝子改変マウスを用いて世界で初めて証明してきた。一方、最近のがんゲノムプロジェクトの成果により、がん遺伝変異データベースでは、皮膚基底細胞がんとメラノーマにおいて、Ppp6c変異がそれぞれ約20%と約10%の頻度で報告されている。 申請者は、プレリミナリーな検討で、Ppp6c欠損ケラチノサイトの腫瘍形成に対して、変異型RAS、または変異型変異型RASおよびp53欠損が、相乗効果をもって、腫瘍化を更新させる可能性を示唆する結果を得ている。本研究では、3つの課題の解明を行っている。課題1は、ケラチノサイト特異的に2重変異(Ppp6c欠損+変異型RAS)を導入し、腫瘍発生の有無とその特徴を明らかにすることである。課題2は、メラノサイト特異的に2重変異(Ppp6c欠損+変異型BRAF)を導入し、Ppp6cがメラノーマがん抑制遺伝子として働くか否かの検証を行うことである。課題3は、ケラチノサイト特異的に3重変異(Ppp6c欠損+変異型RAS+p53欠損)を導入し、変異型RASとp53欠損による腫瘍形成能に対するPpp6c欠損の働きを解析することである。これらデータをもとに、PP6の脱リン酸化反応が不全になったことによって引き起こされる皮膚腫瘍(ケラチノサイトおよびメラノサイト由来の腫瘍)に対する治療の可能性を探る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題1に関しては、特に進展が顕著であり、以下の結果が得られた。重層扁平上皮特異的に、タモキシフェン投与により、2重変異(K-rasG12D発現とPpp6c欠損)を誘導発現させるマウスK14-CreTAM; KrasLSL-G12D/+; Ppp6cflox/flox K14-CreTAM; p53loxp/+; Ppp6cflox/flox上記の証明のため、申請者は、扁平上皮細胞で2重変異(変異型KRAS発現とPpp6c欠損)を惹起するマウスを作製し、全身皮膚にこの2重変異導入する実験を開始した。驚いたことわずか2週間で、口唇、手指、乳頭、会陰部などで、著しい皮膚の肥厚(papilloma)が認められた。一方で、変異型KRASのみの発現だと殆ど異常は認められない)。さらに重要なことには、3週間目には、口唇の肥厚部に、扁平上皮がん(SCC)が認められた。一方、課題2および課題3に関しても概ね順調に進展しており、今後は以下の方策で進展させる。
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今後の研究の推進方策 |
課題2に関しては、市販のメラノーマ誘導マウス(変異型BRAFとPTEN欠損:Tyrosinase-CreERT2;BrafF-V600E/+;Ptenflox/flox)を利用して、検証用のマウス(変異型BRAFとPpp6c欠損:Tyrosinase-CreERT2;B-rafF-V600E/+;Ppp6cflox/flox)をした。タモキシフェンにより変異を誘導させたところ、2重変異導入のみでは、メラノーマが発生しないことが分かった。今後は、2重変異導入マウスに対して、UV照射を行い、メラノーマの発生の有無を検討する。 課題3に関しては、扁平上皮細胞で2重変異(変異型p53発現とPpp6c欠損)を惹起するマウスの作製に成功した。今度は、本マウスに、タモシフェンを投与して、腫瘍の発生の有無を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品費が当初の想定よりも少なく済んだため。 最終年度の消耗品費に上積みし、より迅速な計画進捗をねらう。
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