研究課題/領域番号 |
18K16044
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
木曽 真弘 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 医師 (20769517)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ヒト毛乳頭細胞 / TERT遺伝子 / Bmi1遺伝子 / 毛包誘導能 / Chamber法 |
研究実績の概要 |
毛包の発生は胎生期に上皮‐間葉系細胞間の複雑なシグナルを経て行われる(Schimidt-Ullrich R, et al. Molecular principles of hair follicle induction and morphogenesis. Bioessays 2005)が、生後も何度も毛周期を経て、新しい毛包が形成される。毛包を形成する上で間葉系細胞の鍵となる細胞が毛乳頭細胞である。我々はマウス毛乳頭細胞の単離の技術を駆使し、不死化マウス毛乳頭細胞を樹立した(Kiso M, et al. Synergistic effect of PDGF and FGF2 for cell proliferation and hair inductive activity in murine vibrissal dermal papilla in vitro. J Dermatol Sci 2015)。不死化した細胞について毛包再構築実験にて毛包再生を確認するとともに遺伝子プロファイリングも行ってきた(Kiso M, et al. Introduction of the TERT and BMI1 genes into murine dermal papilla cells ameliorates hair inductive activity. J Dermatol Sci 2018)。我々はTERTとBMI遺伝子をウイルスベクターを用いて導入することにより、ヒト毛乳頭細胞の不死化を試み、マウスの上皮細胞と混合して移植すると毛包誘導能が見られることを確認した。毛包誘導能を維持できることが重要と考えられ、脱毛症などの発症機序の解明や新規薬剤の開発だけでなく、in vitroでの細胞間の相互シグナルの解明にも貢献できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスの毛乳頭細胞にレンチウイルスベクターを用いて、テロメア逆転写タンパク質(TERT)遺伝子とBmi1遺伝子を導入することで細胞を不死化できることを報告した(Kiso M, et al. Introduction of the TERT and BMI1 Genes into Murine Dermal Papilla Cells Ameliorates Hair Inductive Activity. J Dermatol Sci 2018)。我々は国立国際医療研究センターでの倫理委員会の承認を経て、患者から採取した頭部余剰皮膚からヒト毛乳頭細胞を単離、培養し、マウスと同様にレンチウイルスベクターを用いて、ヒト毛乳頭細胞にTERT遺伝子とBMI1遺伝子、TERT遺伝子単独、BMI1遺伝子単独をそれぞれ導入した。RT-PCRでそれぞれの遺伝子が発現していることを、ウエスタンブロットにてTERTとBMi1のタンパクが発現していることを確認した。次に上記3種の細胞の増殖能を比較したところ、TERT遺伝子とBmi1遺伝子の両方を遺伝子導入した方が増殖能は高いことがわかった。上記3種の細胞と、週齢17.5~18.5日目の胎児のマウスから採取した表皮を混合し、ヌードマウスに移植して毛包再構築実験(Chamber法)を行い、各細胞の毛包誘導能を比較した。TERT遺伝子とBmi1遺伝子の両方で毛包誘導能は保たれるが、Bmi1遺伝子単独を遺伝子導入しても毛包誘導能は保たれていないことがわかった。TERT遺伝子単独導入群でも1度毛包誘導が見られたので、再検中である。再生した毛包を移植後、経時的に観察し、組織学的に評価した。移植後再生した毛包を採取してヒトの核に特異的な抗体を用いて免疫染色を行った。
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今後の研究の推進方策 |
TERT遺伝子とBMI1遺伝子、TERT遺伝子単独、BMI1遺伝子単独を導入した毛乳頭細胞をマイクロアレイ解析や定量的PCRによって、遺伝子発現や発現量を比較し、毛包誘導能に関連する遺伝子の候補を抽出し、siRNA等で当該遺伝子の発現を抑制して、毛包誘導能に関与しているかを検証する。
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