研究実績の概要 |
昨今の遺伝子解析技術の飛躍により、遺伝性色素異常症においても新規責任遺伝子が次々と同定されている。そこで我々は、次世代シークエンサーを用いたターゲットリシーケンス法により効率的かつ網羅的に遺伝性色素異常症患者の責任遺伝子をスクリーニングするシステムを確立し、従来のスクリーニング法で診断不能であった症例(未診断例)55例、および新規症例35例を解析した。その結果、未診断例22例 (40%)、新規症例30例(85%)において遺伝的に診断が確定した。その中には、Hermansky-Pudlak症候群 (HPS) 2, 3, 6型、Tietz症候群など、日本人では未報告、もしくは報告の非常に少ない症例が複数含まれていた。眼皮膚白皮症6型 (OCA6)の日本人初症例に関しては、CRISPR/CAS9システムを用いて患者と相似するミスセンス変異を持つモデルマウスを作製し、その機能解析を行っているところである。 また、OCA4の原因遺伝子であるSLC45A2のヘテロ接合性病的変異が一つのみ確認され、もう一方の変異が確認できない症例(suspected OCA4: sOCA4)において、SLC45A2のプロモーター領域にあるc.-492_489delAATGの4塩基欠失多型がsOCA4患者の大半に認められることを見出した。さらにin vitroの実験にて、この欠失バリアントにより遺伝子転写活性・DNA結合能が低下することを示し、c.-492_489delAATGはもう一方の病的変異と組み合わさることにより、OCA4を発症すると結論づけ、学術誌に報告した。また、このバリアントは健常人の数%においてキャリアーであることがわかり、日本人皮膚色に与える影響についても検討し、学術誌に報告した。
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