昨年度中に、これまでの未診断例に対する次世代シークエンサー解析(ターゲットリシーケンス法)は終了し、今年度は新規症例28例の遺伝子解析を施行した。その結果、臨床診断が妥当であると考えられる症例に関してはほぼ100%遺伝的に診断が確定した。特に、これまで本邦未報告の"Autosomal dominant lentiginous phenotype"(責任遺伝子:SASH1)と呼ばれる病態の患者を新規に4家系同定し、計3つの新規遺伝子変異を同定した。この疾患は、幼少時から顔面四肢などの露光部にそばかす様の細かい褐色班が多発する常染色体顕性遺伝性疾患であるが、その疾患メカニズムは全く解明されていない。現在、患者の皮膚組織(色素増強部と健常部)由来のRNAを用いて、トランスクリプトーム解析を行い、遺伝子発現の変動を解析しているところである。 一方で、眼皮膚白皮症6型(OCA6)の日本人初症例に関しては、患者と相似するミスセンス変異をCRISPR/CAS9システムを用いてモデルマウスを作出し、皮膚(耳介)および毛髪のメラニン分析を行った。その結果、この変異を持つことでフレームシフト変異を導入したノックアウトマウスとほぼ同様の色素低下を起こし、特に毛髪においてフェオメラニン/ユーメラニン比が有意に上昇していることがわかった。すなわち、患者で同定された新規ミスセンス変異が病的であることが強く示唆された。OCA6はヒトにおいてもマウスにおいても色素の低下は比較的軽症であるが、少なくともヒトにおいては眼症状は重症であることが多い。皮膚症状と眼症状の重症度の乖離の原因についての知見はこれまでになく、現在、このモデルマウスの眼症状の評価を行っているところである。
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