まず、次世代シークエンサー(NGS)を用いた網羅的な遺伝性色素異常症患者の遺伝子変異スクリーニングを、当該遺伝子群にターゲットを絞ることで効率的に解析する(ターゲットシークエンス)ことに成功した。これにより従来の方法で診断不能であった複数の患者において、これまで未報告もしくは非常に稀なサブタイプの診断に至った。さらに、全研究期間において約120家系の新規症例の遺伝子解析を行い、そのうち90家系を占める眼皮膚白皮症(OCA)疑い症例においては80%以上の確率で遺伝的に診断が確定し、さらに診断不能例のほとんどは、OCAと色白との境界領域であると判断することができた。 日本人第一例目となるOCA6型の症例に関しては、その患者の持つ新規ミスセンス変異に関して詳細な機能解析を行った。具体的には、CRISPR/Cas9システムを用いて、マウスにおいて相同の遺伝子変異を再現し、同変異が機能低下型の病的変異であることを証明した。さらに、主に最終年度においてOCA6の原因遺伝子であるSLC24A5の網膜色素上皮と神経堤由来の色素細胞(メラノサイト)のメラニン産生への貢献度について検討し、網膜色素上皮においてより顕著にメラニン産生能が低下することを見出した。これは、OCA6患者において皮膚や毛髪の色素低下が軽度にも関わらず、重症の眼症状を呈することの根拠となりうる。 最終年度は新規32症例について遺伝子解析を行い、そのほとんどで遺伝的に診断が確定した。特に、ADAM10の新規遺伝子変異によって発症した網状肢端色素沈着症の症例に関しては、その病態をより詳細に検討する予定である。
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