研究実績の概要 |
1.TCHHL1 siRNAによる皮膚癌に対する増殖抑制効果の検討:皮膚有棘細胞癌株HSC1細胞におけるTCHHL1 siRNAによる増殖抑制の機序を検討したところ、ERK1/2以外にSTAT3とAKTのリン酸化の抑制も確認された。さらにTCHHL1 の抑制によりアポトーシスが誘導され、BCL2、BCL2L11、FOXO1の関与が確認された。また、他臓器の癌におけるTCHHL1の関与を解析するにあたり、各臓器におけるTCHHL1の発現をHuman MTC panel1,2(脾、小腸、精巣、大腸、胸腺、卵巣、前立腺、白血球、骨格筋、腎、膵、肝、心、脳、肺、胎盤)を用いてPCR法で調べたが、いずれの臓器にも発現は見られなかった。
2.皮膚疾患の病態形成におけるTCHHL1蛋白質の関与の検討:TCHHL1が病態形成に関与している皮膚疾患をスクリーニングとして、乾癬、扁平苔癬、日光角化症、ボーエン病、BCC、SCCに加え、尋常性魚鱗癬、X連鎖性劣性魚鱗癬、単純型先天性表皮水疱症、掌蹠角化症、ダリエー病、ヘイリーヘイリー病、アトピー性皮膚炎、掌蹠膿疱症における発現を調べた。その結果、アトピー性皮膚炎、ダリエー病、ヘイリーヘイリー病でTCHHL1の発現量の増加がみられた。
3.乾癬皮膚モデルおよびアトピー皮膚モデルにおけるTCHHL1の機能解析:3次元皮膚培養系にTNF-α、IL-17A、IL-22を添加し乾癬皮膚モデルをIL-4、IL-13を添加しアトピー皮膚モデルを作製し、TCHHL1の発現を検討した。乾癬モデル皮膚、アトピーモデル皮膚でTCHHL1の発現は増加していた。一方、FLGの発現を抑制した3次元皮膚ではTCHHL1の発現は増加しなかった。TCHHL1の機能に及ぼすサイトカインの影響と他のS100蛋白質との相互関係について解析している。
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