乾癬について患者血清中のプログラニュリン(PGRN)濃度測定、皮疹組織におけるPGRNの発現の検討を計画した。その中でまず同じ重要な炎症性皮膚疾患であるアトピー性皮膚炎をdisease controlとして、両疾患患者の血清中PGRN濃度を測定した。その結果、乾癬、アトピー性皮膚炎ともに健常人に比べ、有意に増加することが明らかになった。血清PGRN濃度は乾癬の臨床的重症度マーカーであるpsoriasis area and severity index (PASI)と正の相関があったが、関節症状の有無で差異はみられなかった。また、乾癬患者において血清PGRN濃度は血清中のインターロイキン(IL)-17およびIL-22濃度と相関した。しかし、IL-36γ、Tumor necrosis factor (TNF)α濃度とは相関しなかった。一方、アトピー性皮膚炎では臨床的重症度マーカーであるEczema Area and Severity Index (EASI)およびSeverity SCORing Atopic Dermatitis (SCORAD)、血清IgE値と血清中PGRN濃度の相関はなかったが、血清中Thymus and activation-regulated chemokine (TARC)濃度およびIL-36γ濃度と相関した。 次に培養表皮細胞におけるPGRNの作用を検討した。PGRNを培養液に添加した際に表皮細胞でのIL-23発現量の増加がみられた。さらに種々のサイトカインを培養液に添加した際のPGRN発現量を検討したところ、IL-22、IL-36γ、TNFα添加により発現量の有意な増加がみられた。IL-23、IL-22、IL-36γ、TNFαはいずれも乾癬の病態で重要性が指摘されているサイトカインである。以上からPGRNは乾癬の病態においてサイトカインネットワークを介して役割を果たすことが示唆された。
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