研究課題/領域番号 |
18K16063
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
三宅 智子 岡山大学, 大学病院, 助教 (30749627)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 種痘様水疱症 / EBウイルス / 重症化 |
研究実績の概要 |
種痘様水疱症(Hydora vaccniforme; HV)は、日光露光部の皮膚を中心に水疱、痂皮や瘢痕のサイクルを繰り返す小児に認める疾患で、皮膚病変部にEpstein-Barr virus (EBV)を認める。本疾患は、皮膚症状のみの古典型 (cHV)と、発熱、リンパ節腫脹あるいは肝機能障害等の全身症状を認める全身型 (sHV)の2つの病型がある。古典型HVの治療は、遮光のみで経過観察だが、全身型の場合は、化学療法や骨髄移植が必要となる。申請者らは、慢性活動性EBV感染症の類縁疾患と考えられるHVや蚊刺過敏症患者の予後解析を行った結果、古典型HVは予後良好だったが、全身型HVは予後不良であった。予後不良因子は、1)発症年齢が、9歳以上であること、2)皮膚病変部にEBV再活性化マーカーであるBZLF1 mRNAが発現していることだった(Br J Dermatol, 2015)。一方、全身型でもBZLF1 mRNAを発現していない症例や古典型から全身型へ移行する症例もあり、重症化マーカーに関しては、不明な点も多い。今回我々は本研究で、HVの皮膚病変部と血漿中でのサイトカインを検討し、古典型と予後不良と考えられる全身型の診断基準を明確にすることを目的とした。 1、αβ型とγδ型HV患者のEBV再活性化マーカーと予後の検討で、αβ型が予後不良であった。 2、HV患者血漿中のEBV DNA量と皮膚症状、血液学的検査所見の検討において、血球中のEBVDNA量は種痘様水疱症の診断マーカーとなること、血漿中のEBVDNA量は診断マーカーとはならないが、血球貪食症候群の患者で上昇を認めており、EBV感染細胞に対する宿主の細胞性免疫応答の影響であることを報告し、現在論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1、αβ型とγδ型HV患者のEBV再活性化マーカーと予後の検討において、我々の検討では、EBVがαβ細胞に感染した方が、予後不良であることが分かった。さらに感染細胞後とのEBV再活性化マーカーとの統計学的解析を行っている。 2.HV患者血漿中のEBV DNA量と皮膚症状、血液学的検査所見の検討において、血球中のEBVDNA量は種痘様水疱症の診断マーカーとなること、血漿中のEBVDNA量は診断マーカーとはならないが、血球貪食症候群の患者で上昇を認めており、EBV感染細胞に対する宿主の細胞性免疫応答の影響であることを報告し、現在論文投稿中である。 3.HV患者の皮膚病変部と血清/血漿中のサイトカインの検討を行っている。患者の皮膚病変部でのサイトカインの検討では、古典型の場合は、重症型と比較して皮膚病変部ではIL6の発現が上昇を認めていた。一方IL4,IL18、IL12等のサイトカインの上昇は認めていなかった。またHV患者病変部では、IL1bやTNFの軽度上昇を認めており、皮膚病変形成機序に関わっている可能性を考えている。一方患者血漿中では重症型の方が、CCL3やCXCL9の上昇を認めていており、これらの検討を臨床症状と比較していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
EBV陽性培養細胞株(γδ、T細胞、NK細胞)からRNAを抽出し、cDNAを作成。上記サイトカインの有意差がないかを感染細胞ごとにreal-time PCRにて検討を行っていく予定である。また可能であるならば上澄み液からELISAにてサイトカインの差がないかも行う予定である。さらに患者血液からγδ細胞培養樹立を現在も行っている。健常人からのγδT細胞の培養に関してはテクノスズタ会社(田中義信先生御指導の下)より販売されているキットを使用し、まずは自分自身の血液を使用してγδ細胞の培養を練習中である。
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