研究課題/領域番号 |
18K16066
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
宮城 拓也 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00631988)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | HTLV-1 / 紫外線 / PGE2 / 発癌 / PD-L1 |
研究実績の概要 |
南九州、特に沖縄は、世界的にも成人T細胞白血病ウイルス(HTLV1)への感染率が非常に高いことに加え、日本の他地域と比べ、HTLV1キャリアー中の成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)の発症数が、2.6倍と極めて高い。本研究は、沖縄でのATLの高発症に寄与する亜熱帯地域での環境因子、特に紫外線暴露の影響と、HTLV1キャリアーへの紫外線治療の認容性を明らかにすることを目的としている。これまで、紫外線照射により表皮角化細胞が分泌するPGE2が、HTLV1感染T細胞のEP4受容体を介し、ウイルス抗原のTax・gp46と共抑制分子であるPD-L1の発現を増強することを見出した。本課題では皮膚を場とし、HTLV1 感染細胞と宿主の免疫反応に生じる複層的な変化をin vitro の系と臨床検体で評価し、ガイドラインが推奨する紫外線療法のATL患者への妥当性と、HTLV1キャリアーに対する危険性を再検討する。そのため、HTLV1感染細胞に加えて、PGE2添加後の正常CD4/ CD8陽性のT細胞やHTLV1非感染の皮膚T細胞リンパ腫の細胞株(HuT 78)における遺伝子変動を網羅的に調べ、継続的な紫外線曝露で生じる皮膚のHTLV1感染細胞と宿主の免疫反応に生じる複層的な変化を評価する。その結果HTLV-1感染細胞ではPGE2によりPD-L1が誘導されるが、PD-L1以外の免疫チェックポイント因子であるHVEM、PD-L2も誘導されることを見出した。研究成果を欧州研究皮膚科学会議で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、026i細胞、056i細胞、ILT-H2細胞などの多様なHTLV1感染細胞と、HTLV1の感染のない市販の正常CD4細胞とCD8細胞、皮膚T細胞リンパ腫細胞株(HuT 78)に、PGE2を添加し、その後の遺伝子変動をマイクロアレーにより網羅的に解析し、共通する遺伝子変動を経時的に抽出する。この遺伝子変動の差を、HTLV1の感染の有無で差分することで、HTLV1感染細胞に特異的な腫瘍化過程に関与する遺伝子群、さらに正常なCD8細胞の腫瘍抑制機能に関する遺伝子群として決定した後に、NHEKへUVB照射後の培養上清をHTLV1感染細胞に添加し同様に解析する。その結果をPGE2刺激後のHTLV1感染細胞の遺伝子発現と比較することで、PGE2以外の紫外線による影響とその作用因子も探る。培養細胞という条件下での解析ではあるが、マイクロアレーによる解析は、各細胞群で代表的なHTLV1感染細胞における経時的ポイント、各正常T細胞において、4検体以上の統計的解析の可能な検体数において解析を進める。さらにRNA発現の変動の解析結果を元に、増殖・不死化に関する遺伝子群と、腫瘍細胞自己に対する免疫応答に関わる遺伝子群に分け、ATLの皮膚病変とリンパ節病変、HTLV1キャリアの皮膚病、さらに疾患コントロールとなるHTLV1の感染のない皮膚T細胞リンパ腫において、逐次、免疫染色により解析する予定であった。
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今後の研究の推進方策 |
正常CD4陽性T細胞を多く購入し、初期量を増やすことで対応する。それでも達成できない場合は購入ではなく、正常人の末梢血からCD4陽性細胞を単離し、それを用いて研究を行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、非感染細胞である購入した正常CD4陽性T細胞で評価を行っているが、CD4陽性細胞の増殖が少ないため、評価に必要なRNAの量が回収できておらず、正常検体と比較ができていない。そのため、最初の網羅的解析が行えておらず、解析で使用する予定であった予算も使用できずに繰り越すこととなっている。
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