研究課題
南九州、特に沖縄は、世界的にも成人T細胞白血病ウイルス(HTLV1)への感染率が非常に高い。我々の感染率調査や発症率の疫学調査から、沖縄県ではHTLV1への潜在感染率のみならず、キャリアー中からのATL発癌の年間の発症率自体も有意に高い。実際、日本の他地域と比べ、HTLV1キャリアー中の成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)の発症数が、2.6倍と極めて高い。本研究課題では、沖縄県のATLの発症率が他のHTLV1の高感染地域である九州と比べても、約3倍ほど高率である原因の解明を目指す。亜熱帯の沖縄では、強い紫外線に年中曝露されることに加え、紫外線は皮膚の角化細胞のPGE2産生を促し、PGE2は制御性T細胞を皮膚に誘導する。また、PGE2は末梢血単核球からのHTLV1のウイルス産生自体を増加させ、正常の単核球へのHTLV1感染を促進する。ATLは皮膚への浸潤傾向が強く、皮膚型ATLとして表皮を腫瘍化の主病変とする病型も存在する。このため、環境因子である紫外線が皮膚を介してATLの発症に関与しているのではないかと考えた。本研究課題では、紫外線暴露に着目し、表皮角化細胞を介したHTLV1感染T細胞の悪性化の促進や抗腫瘍免疫の抑制に関し、皮膚を場としたATLの発癌機構を明らかにしたい。臨床現場では、ATLの皮膚病変に対し紫外線療法がガイドライン上で推奨されているが、根拠とするエビデンスは少なく、長期的な予後の検討はされていない。特に、ATL発症前のHTLV1キャリアー患者に対する紫外線療法の危険性は検討されていない。HTLV1キャリアーとATL患者が極めて多い沖縄においては、本来は両者に対する紫外線療法の安全性については、分けて検討する必要があると感じている。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (14件)
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