本研究では、新生児期から共焦点ラマン分光計(以下、ラマン計)による角層内因子の解析を行い、アトピー性皮膚炎、アレルギー疾患の発症との相関を解析することを目的としている。ラマン計を用いることで、非侵襲的にin vivoで角層水分量、天然保湿因子、セラミド、コレステロールなどを角層内の濃度勾配も含めて解析することが可能であるが、1回の測定に数分間測定部位を静止する必要がある。そのため、新生児、乳児では測定中に動いてしまうことが多く、成人と比較して安定した測定データを得ることが困難であった。初年度は、新生児、乳児においてラマン計測定で安定したデータを得るために、0ヶ月 10名、1ヶ月 7名、4-8ヶ月 10名の新生児、乳児 計27名を対象に、ラマン計による測定条件を検討した。測定部位、測定時の体勢などを検討するとともに、ラマン分光計による測定間隔も検討した。ラマン分光計では、測定間隔を倍にすると、測定時間を半分にすることができる。測定部位については、前腕、下腿屈側の2箇所で検討を行った。新生児、乳児ともに、前腕より下腿屈側の方が安定したデータを得ることができた。また、角層の測定間隔については、4μm毎の測定でも2μm毎の測定とほぼ同精度の測定データが得られることが明らかとなった。また、新生児、 1ヶ月、4-8ヶ月の3群に分けると、角層水分量は新生児で最も低いのに対し、NMF、セラミド、コレステロールに関しては、新生児、1ヶ月、4-8ヶ月と成長とともに減少していく傾向がみられた。初年度に得られた測定条件を元に、昨年度より各個人ごとに0ヶ月、1ヶ月、2ヶ月、6ヶ月、12ヶ月と継時的にデータを取得する研究を開始し、2021年3月時点で新生児50名のリクルートを完了し、生後1ヶ月 46名、2ヶ月 46名、6ヶ月 45名の測定が終了した。
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