研究課題
骨髄異形性症候群 (MDS) 患者において、ポリコーム抑制複合体2 (PRC2) の機能喪失型変異が認められている。我々は造血細胞におけるPRC2機能を極限まで低下させたマウス(Ezh1+/-Ezh2-/-)が、MDS様の病態を示すことを確認した。PRC2機能喪失型MDSの分子基盤を理解するため、このモデルマウスにおける造血幹前駆細胞の PRC2によって触媒されるヒストン修飾 (H3K27me3) をゲノムワイドに解析し、PRC2 が MDS 幹細胞を維持するのに必須な Core target gene (core PRC2 TG)を同定した。しかしながら、遺伝子発現のエピジェティック制御は極めて複雑であり、全容の理解には至っていなかった。本研究においては、H3K27me3以外のヒストン修飾にも解析の対象を広げ、MDS疾患エピゲノム基盤を理解することを目的とした。PRC1は、H2AK119ub1を触媒し、PRC2同様転写を抑制する。PRC1 は、クロマチンへのリクルートにおいて H3K27me3 に依存する canonical PRC1 の他に、H3K27me3非依存性のvariant PRC1の存在が明らかとなっている。本研究における ChIP-seq の結果、variant PRC1によるH2AK119ub1 が、core PRC2 TGの抑制に関わることが分かり、MDS 幹細胞を死滅させる治療戦略において、variant PRC1の創薬標的としての可能性を見出した。さらに、Core PRC2 TG において、H3K27me3 はH3K4me3 と共存し、Bivalent domain を形成し、主に分化制御遺伝子を多く含むことも分かった。
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Oncogene
巻: 印刷中 ページ: -
10.1038/s41388-018-0481-z
Journal of Clinical Investigation
巻: 128 ページ: 3872~3886
10.1172/JCI94645