研究課題/領域番号 |
18K16080
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
大竹 志門 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (50813060)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | CLEC-2 / ポドプラニン / 赤芽球造血 / 巨核球 |
研究実績の概要 |
我々は血小板活性化受容体CLEC-2を同定し,CLEC-2巨核球血小板特異的ノックアウト(CLEC-2 cKO)マウスが,血小板減少と貧血をきたすことを見出した.CLEC-2が巨核球造血に果たす役割については,巨核球とCLEC-2の生体内リガンドであるポドプラニンを発現する間質細胞が骨髄微小環境を形成し,巨核球造血を制御していることを報告したものの,赤血球造血に及ぼす影響について報告はない. 昨年度までの検討で,CLEC-2 cKOマウスは,好塩基性赤芽球以降の分化段階にあたるTER119陽性分画が減少し,そのアポトーシス細胞割合が増加していることを確認した. 巨核球とPDPN発現間質細胞が赤芽球造血を制御している可能性を考え,培養環境でPDPN発現間質細胞にCLEC-2-Fc融合蛋白またはFc蛋白を加え,48時間後に馴化培地を回収した.この馴化培地をサイトカインアレイで解析した結果,前者において,IL-6が増加していたが,ELISA法で血清・骨髄細胞外液IL-6濃度を測定したところ,いずれも検出限界未満だったことから,マウス生体内でIL-6の関与は乏しいと考えた. 赤芽球造血にはIGF-1も関与することから,前述の馴化培地における濃度を再度サイトカインアレイ,ELISA法で定量したところ,CLEC-2-Fc刺激時に増加が認められた.引き続き,IGF-1受容体拮抗薬を培地に添加すると赤芽球のアポトーシス細胞割合が有意に増加すること,IGF-1受容体がCD71+赤芽球上に発現することを確認した.さらにマウス生体内においても,血清・骨髄細胞外液においてIGF-1濃度をELISA法で測定したところ,有意に減少していたことから,CLEC-2 cKOマウスにおけるTER119陽性細胞のアポトーシス増加には,不十分なIGF-1分泌が関与していると考えられた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
貧血を呈するCLEC-2 cKOマウス骨髄において,赤芽球のアポトーシス細胞割合が増加およびTER119+細胞割合が減少していた.本年度は新たに,CLEC-2のリガンドであるポドプラニンを発現する骨髄間質細胞を培養し,リコンビナントCLEC-2を加えて刺激したところ,in vitroにおいて赤芽球のアポトーシスを抑制するIGF-1が分泌されていた.IGF-1は未熟赤芽球に対するアポトーシス抑制作用を示し,さらに,in vivoにおいても,血清・骨髄細胞外液中の濃度が減少していた.現在までの進捗により,CLEC-2とPDPNの形成する骨髄微小環境において,IGF-1が赤芽球の造血に正の影響を及ぼしている可能性が新たに示唆されており,おおむね順調に進捗していると評価した.
|
今後の研究の推進方策 |
CLEC-2とPDPNの形成する骨髄微小環境において,IGF-1が赤芽球の造血に正の影響を及ぼしている可能性が新たに示唆された.以上の結果から,引き続き,IGF-1の投与により貧血や赤芽球アポトーシス割合の増加が改善するかどうか,また生化学検査によりこれらを支持するデータが得られるかどうかを検討する方針である. 造血幹細胞や造血前駆細胞については過去の文献などをもとに変化がないものと想定しているが,そのコロニー形成能に変化がないか系の立ち上げを含めて検討を行う.
|