我々は血小板活性化受容体CLEC-2を同定し,CLEC-2巨核球血小板特異的ノックアウト(CLEC-2 cKO)マウスが,血小板減少と貧血をきたすことを見出した.CLEC-2が巨核球造血に果たす役割については,巨核球とCLEC-2の生体内リガンドであるポドプラニンを発現する間質細胞が骨髄微小環境を形成し,巨核球造血を制御していることを報告したものの,赤血球造血に及ぼす影響について報告はない. 昨年度までの検討で,CLEC-2 cKOマウスは,好塩基性赤芽球以降の分化段階にあたるTER119陽性分画が減少し,そのアポトーシス細胞割合が増加していることを確認した. 巨核球とPDPN発現間質細胞が赤芽球造血を制御している可能性を考え,培養環境でPDPN発現間質細胞にCLEC-2-Fc融合蛋白またはFc蛋白を加え,48時間後に馴化培地を回収した.この馴化培地をサイトカインアレイで解析した結果,前者において,IGF-1が増加していた.さらに,CLEC-2 cKOマウスの血清IGF-1濃度がコントロールマウスよりも有意に低いことから,リコンビナントIGF-1を皮下注射したところ,2週間後より貧血改善効果が確認された.一方で,コントロールマウスに対するIGF-1投与はヘモグロビン値に対する影響は認められなかった. IGF-1は種々の細胞に対し,PI3k-Akt経路を介して細胞死抑制効果を示すことが報告されていることから,CLEC-2 cKO赤芽球のリン酸化Aktレベルを細胞内フローサイトメトリー法で評価したが,コントロール赤芽球との差は確認できなかった.この原因として,採取後に高濃度のアルデヒドを用いた固定手順を介することが想定された. 以上の結果から,CLEC-2はPDPN発現間質細胞とともに血管性ニッチにおけるIGF-1の適切な分泌を促し,赤血球造血を正に制御することを示すことができた.
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